DRONE FUNDは2020年10月21日、2号ファンドLPであるGMOインターネットを招いてサイバーセキュリティに関する勉強会を開催。勉強会は本日11月20日に発表となったグローバルサインおよびDRONE FUNDのリリースに先駆けて実施されたものだ。将来的にはドローン・エアモビリティの操縦やデータ送信が、5Gや4Gといったインターネット通信を介して行われることを見据え、「インターネット通信における信頼性の高いセキュリティ」であるSSLサーバ証明書の早期活用を促す。GMOインターネットは、「DRONE FUND投資先企業様限定で、認証局事業を展開するGMOグローバルサインからSSLサーバ証明書のPoCへの無償提供を開始する」と発表した。

「5G×空」の世界を、インフラとして構築する

DRONE FUND 千葉氏

 DRONE FUND 千葉氏は、「10月に3号ファンドを組成した。これで日本初となる、1つのベンチャーキャピタルへの3大キャリア同時参画が実現した。『5G×空』の世界をインフラとして作っていくための、社会実装ファンドとしての座組みが整った」と挨拶。そのうえで、ドローン・ジャパン春原久徳氏の記事なども引用しながら、「ドローンのセキュリティの観点は3つに区分される」と切り出した。

 ドローンのセキュリティ3つの観点とは、「機体制御」「機体管理」「情報処理」だ。ドローンで取得したデータのセキュリティである「情報処理」の観点のみならず、フライトコントローラー、機体制御のための高度な自律処理といった機体内部におけるセキュリティ「機体制御」と、遠隔操作中に機体との通信がハッキングされないかなどの「機体管理」の観点も、いま国から非常に重要視されているという。

 「いま国は、基本的には国産ドローンの発注を増やしていく方針で、これにはセキュリティ条件が必ず付与されてくる。つまり、セキュリティ対策を講じていると示すことが出来なければ、公共セクターの重要なプロジェクトに参加すらできないと思っている」(千葉氏)

 千葉氏の話を受けてGMOインターネットの熊谷社長も、「乗り越えるべき法規制はあるにせよ、近未来はドローン・エアモビリティの操縦やデータ送信にも5G、4Gのインターネット通信を利用するようになる。そうなると唯一のセキュリティはSSLである」と言及し、プロダクトの無償提供に踏み切った背景を説明した。

 「国産ドローンとは国産のプロダクトで構成されなければならないが、世界展開しているSSL認証局を持っている日本国内企業はGMOインターネットだけ。他の企業は海外認証局になる。日本の新産業発展のため皆様に貢献したいという思いで、PoCでの利用という条件付ではあるが、GMOグローバルサインのSSLサーバ証明書の無償提供を決めた」(熊谷氏)

 また熊谷氏は、「量産時には他社プロダクトを選択しても問題ない」「SSLは人の命に関わることには使ってはならないというルールがある。そこは約款や契約で乗り越える話になってくると思う」などと補足した。

 実は千葉氏と熊谷氏は、お互いに「高所恐怖症なのに、パイロット」同士。両氏は「仕事の合間に、命をかけて資格とって、自分で空を飛ぶことを本気でやっている。お互いに“変態枠”だ」と冗談交じりに談笑しながらも、「無人機であったとしても人の頭上を飛ぶ以上は危ないことに変わりない。有人飛行が乗り越えてきた死の歴史をちゃんと体感しなければ」と真剣に語り合い、今回のコラボ企画への想いをそれぞれ打ち明けた。

 「空は最後のビジネスフロンティア。『いつかは、我々のテクノロジーで皆さまのお役に立ちたい』という想いを強く持っていた。ドローン・エアモビリティの分野におけるセキュリティ領域は、まだまだ発展の余地があるとともに、我々が貢献できる領域だと考えている」(熊谷氏)

 「熊谷さんが取り組まれているのは、インターネット広しといえども、全て『インフラ』。誰よりも先にサービスを開発して、大変な苦労をするけれどもしっかりと立ち上げ、社会インフラになった時にはそのシェアを取っていくというやり方は、我々も学ぶべきところ。DRONE FUNDも『5G×空』の世界をインフラとして構築して、5年後10年後には大きなビジネスに育てていきたい」(千葉氏)

GMOインターネット、「空」へ事業拡大

GMOインターネットグループ 熊谷氏

 当日はこのようなトップ対談のあと、まず熊谷氏からGMOインターネットグループの会社概要について説明があった。GMOインターネットグループは、渋谷を本拠地として活動しているIT企業で、上場企業10社を含むグループ時価総額は直近で1兆4,913億円(2020年8月現在)。「パートナー」と称する従業員は約6,000名で、そのうち約45%はものづくりに関わり、同社プロダクトは全て内製だという。

 売上の約6割がインターネットインフラ事業で、国内シェア50%以上を誇るSSLもこの領域のプロダクトだ。創業時から手がけてきたプロバイダ事業は24年間継続しているほか、15年前に開始した金融関連事業も、三井住友銀行とのジョイントベンチャー立ち上げや、国内為替の約3分の1の決済を手掛けるなど堅調で、領域は証券FX、ネット銀行、仮想通貨、決済と幅広い。

 「すべての人にインターネット」を掲げ、インターネット関連の多岐にわたるインフラを手掛けてきた熊谷氏だが、見据える近未来はこうだ。「輸送は大量から個別へ。運転は手動から自動へ。エンジンはガソリンから電気へ。都市一局集中から地方が主役の時代に変わり、その結果、いまのルートは陸中心だが空中心へと変わるのではないだろうか」(熊谷氏)。ドローン・エアモビリティのセキュリティ領域における空への事業拡大に意欲を示した。