80km/hで飛ぶドローンは琵琶湖をわずか16分で横断した

 実証実験は29日午後に開始され、彦根市松原町の琵琶湖に面した広場からドローンは離陸した。原則として飛行は、あらかじめプログラムされたミッションに従うことになっており、離陸から着陸まですべて自動で行われる。ドローンはヘリパッドから離陸して上昇、巡航高度に達するとすぐに琵琶湖の対岸に向けて水平飛行を始めた。

飛行に向けて準備が進められる琵琶湖岸に設けられた彦根市側の離発着場所。
Wingcopterのカーゴポッドには、実験協力企業のひとつである、たねやグループの洋菓子メーカー・クラブハリエのバームクーヘンが積み込まれた。

 飛行中は機体から送られてくるカメラの映像とテレメトリー情報を基地局側で監視。湖岸を離れてしばらくすると、携帯電話ネットワーク経由で同じ情報が送られてくる。ドローンは原則として決められたルートに従って自動で飛行するが、離発着場周辺では非常時に送信機から手動に切り替えてオペレーターが操縦して着陸させる。また、湖岸から離れた湖上では送信機と通信ができないため、非常時は自動で湖岸に着陸するように決められている。

機体から送られてくる映像やテレメトリー情報を監視するパイロットとオペレーター。
飛行ルートは彦根市と高島市の湖岸を一直線に結ぶ約16kmのルート。飛行中はその位置や機体の状態、カメラからの映像が、無線と携帯電話ネットワーク経由で送られてくる。

 彦根市側を離れたドローンは順調に琵琶湖上空を飛行。約80km/hというスピードで水平飛行するドローンは、16分で対岸の高島市側着陸地点に姿を見せ、自動でマルチコプターモードに切り替わり、ゆっくりと機体を降下させながら着陸した。運航に携わったスタッフによると、湖岸を離れた湖上での通信は原則として携帯電話ネットワークが担うことになっているが、同時に基地局と直接通信を行う映像系とテレメトリー系の電波も、おおよそドローンが対岸に近づくまで届いていたという。

彦根市側から離陸し、上空でマルチコプターモードから固定翼モードに遷移し、すぐに対岸に向けて飛行を始めるドローン。高島市側でもすべて自動で水平飛行から着陸を行った。

 予定では彦根市から高島市まで約16kmの往路を飛行したあと、復路として高島市から琵琶湖の北端にある竹生島を経由して彦根市に戻る約30kmの飛行も実施されるはずであった。しかし、高島市側に到着したドローンの携帯電話ネットワーク経由の通信に問題が発生。今回の飛行では携帯電話ネットワークによる通信が条件であり、実験の終了時刻までに問題を解決できなかったため、復路の実施は見送られることとなった。今年度後半にも携帯電話ネットワークの上空利用が認められ、手続きの利便性が向上することでその利用が急増することを考えると、上空利用によるトラブルも今後、ドローンを運用するうえでの課題のひとつになることだろう。

「約16kmの距離のレベル3運用による飛行実験に成功したのは日本初」(SkyLink Japan)といい、復路では竹生島を経由する30kmのルートも予定されていた。