洗浄後も汚れの付着を抑える専用洗浄剤を使用

 この散水ホースアタッチメントシステムを使ってソーラーパネルの洗浄を行う場合には、同システムの開発にもかかわっている長崎県のドローンサービス企業Flight PILOTが開発した専用洗浄剤「F1」を使用。純水と非イオン系界面活性剤を主な成分とするこの洗浄剤を使うことで、パネルに付着した汚れを浮かして洗い流すことができる。洗浄剤は水溶性で生分解性があるため、周辺の環境への負荷も小さく、また、パネルの表面をコーティングする成分も含まれているため、洗浄後もパネルの汚れの付着を防ぐ効果があるという。

勢いよく洗浄剤をソーラーパネルに吹付けるMG-1。パネルの勾配方向に向かって前後進する形で、ノズル幅半分ずつ航路をずらして並行移動しながら作業を進める。
作業はドローンを操縦するオペレーターのほか、ホースをさばく補助者が付いて行う。
薬剤は一般的な動力噴霧機からホースを介して供給される。
専用洗浄剤F1を水に希釈して使用。
ソーラーパネル洗浄のデモンストレーションの様子。専用洗浄剤F1を噴射した後、同じ経路で水を噴射してすすぎを行う。

 日差しを受けて発電を行う太陽光発電事業では、いかにソーラーパネルの発電効率を上げるかがカギとなる。当然パネルが汚れていると発電効率が落ちるため、パネルの洗浄は欠かせない。専用洗浄剤F1を開発したFlight PILOTの川上代表によると「自社で検証した洗浄直後の発電量の差からシミュレーションした結果、最大の想定値として6カ月で6万円を超える売電額の差が出た」という。

実際に洗浄の有無による作業後約1カ月の発電量の差異と、そこから試算される売電額の差を示したもの。(データは隣接した同設計内容の設備で比較。発電量:55.08kWh、契約量:49.5kWh)

「農閑期に農薬散布ドローンの稼働率を上げることができる」

 また、この散水ホースアタッチメントシステムは、ノズルをミスト状の噴霧に切り替えることで、動力噴霧機を使った農薬の散布が可能。MG-1が高圧ホースを引っ張りながら移動することになるが、適切にホースをさばくことによりMG-1ならホースを曳きながらでも問題なく移動することができるという。「このシステムは農家が一般的に利用している動噴と高圧ホースを活用できることがメリット。さらに、普段使い慣れた1000倍といった通常希釈倍数の農薬を、空中から効率良く散布できる」と北田氏は説明する。

薬剤を拡散させるようにノズルを設定して、農薬を散布するイメージのデモ飛行。この日は約100mの距離を、MG-1がホースを曳きながら飛行した。
前進の場合、ホースを曳くことになるためMG-1はかなり前傾して飛行するが、「飛行には大きな支障はない」(オペレーター)という。

 さらに北田氏によれば、「MG-1のような農薬散布ドローンは農閑期になると使い道がなくなってしまう。そんな農閑期にソーラーパネルや温室ハウスの洗浄といった新しいビジネスを展開することで、稼働率を上げることができる」というのがこのシステムを開発した狙いだという。また、昨今の新型コロナウイルス感染症対策として、空中からの消毒液散布にも応用が可能で、自治体や施設保有者などの関心を集めていると付け加える。

散水ホースアタッチメントシステムの販売元となるワイズ技研の北田論史代表取締役。
専用洗浄剤F1を開発したFlight PILOTの川上貴之代表。

 この散水ホースアタッチメントシステムは、すでにSkyFarmで国土交通省航空局に対する飛行承認を得た実績があるという。価格は税別16万円で、ワイズ技研が販売を行い、今後、全国各地で説明会・デモンストレーションを行う予定だ。