有人航空機との衝突回避「6つの取組」を強化

 しかし、「いま、航空法をクリアすればよいのかという問題に、直面している」(松浦氏)という。テラ・ラボが開発する長距離無人航空機は、高度150m以上での飛行が想定されるためだ。

 松浦氏は、「レベル3や4の目視外飛行となるため、これまでに携帯電話網や衛星通信網による制御の開発を進めてきたが、有人航空機の飛行空域についての十分な理解と、安全に対する倫理観も必要。今後は有人航空機との衝突を回避するための取り組みを強化したい」と話した。具体的には、下記6つの項目が挙げられた。

有人航空機との衝突を回避するための6つの強化項目

(A)自機位置のリアルタイムな把握

 無人航空機の位置や姿勢情報などをリアルタイムに車両型地上支援システムで把握する。

機体に異常があれば即座に退避させられる

(B)ADS-Bの採用

 ADS-B(放送型自動位置情報伝送監視機能)と呼ばれるシステムを無人航空機に搭載し、カテゴリ情報、対気速度、識別、航空機の旋回、上昇降下などの周知を可能にする。

航空機は絶えず現在の位置情報や高度情報を配信

(C)地上管制の強化

 半径30kmの範囲内に航空機が侵入してきた場合、速やかに退避行動が取れるよう、広域に航空管制を行う。

車両型地上支援システムにも航空レーダーを搭載

(D)FAA(米国連邦航空局)耐空証明取得を目指す

 FAAの耐空証明取得を実現し、国際的な有人航空機の飛行空域においても無人航空機の飛行を可能とする。

FAA(米国連邦航空局)の検査を受けて機体の安全性を示す

(E)IFR飛行、VFR飛行対策

 無人航空機が飛行する低高度の飛行空域では、報道ヘリやドクターヘリなどは有視界飛行方式を採用している。そのため、計器に反応させる対策はもちろん、翼の端にオレンジ色を塗装したり閃光ライトを搭載し、有人航空機の無人航空機飛行に対する視認性の向上を図る。

IFR(計器飛行方式)とVFR(有視界飛行方式)への対応

(F)搭載カメラによる自機周辺情報の把握

 無人航空機に搭載するカメラにより、機体周辺の情報取得、目視の補完を行う。高解像度カメラや高圧縮高復元システムによって映像伝送を行う。

少ない通信量で高精度な映像データを地上支援システムへ伝送

 「2020年度は、航空法の遵守のみならず、有人航空機との衝突リスクを少しでも減らし、安心安全の無人航空機の開発を進めるとともに、航空測量技術の高度化を行うことで、災害対応のみならず新たなビジネスの構築を目指したい。」(松浦氏)

無人航空機による航空測量の「パイオニア」に

 DRONE FUND 大前氏は、今回、DRONE FUND(千葉道場ドローン部投資事業有限責任組合)2号からテラ・ラボへの出資に至った経緯として、テラ・ラボの強みを紹介した。

DRONE FUND 大前氏による「テラ・ラボの強み」

 大前氏は、「長距離固定翼ドローンにおいてテラ・ラボは、国内有数のプロダクトと技術力の高い開発チームを有している。航空局とのリレーション構築、愛知県や名古屋市、福島県などの地方自治体との連携にも積極的で、日本社会における1,000mクラスの高度での固定翼機実運用実績も豊富である」と、出資における着眼点を説明。

 特に、災害対策システムの利活用については、「多くの拠点で非常に深く話し合われており素晴らしい」と評した。必要敷地面積などの点で難しいとされる固定翼機の開発で、福島ロボットテストフィールドを上手く活用できている点もポイントだ。

 今後の狙いについては、「災害対応のみならず、平時の航空測量における無人航空機のビジネスを検討して行きたい」と言及。テラ・ラボが、災害対応システムに限らず、独自技術を用いた新しいビジネスモデルを開発できるフェーズに入ったことは、今回の出資および大前氏の社外取締役就任における、非常に大きなポイントだという。

 「これまで、航空測量分野においては有人機が主流で、無人航空機の活用はまだゼロだと捉えている。ドローン測量は150mまでの範囲で度々行われているが、さらに高高度な空域から、より広域をターゲットとして考えて行きたい。」(大前氏)

 ちなみに、「DRONE FUNDの投資ポートフォリオの中で、テラ・ラボと同様の位置付けの投資先はない。全く新しいタイプの企業」だと大前氏は断言。現段階では、テラ・ラボの長距離固定翼ドローンによる新しい事業の構想に集中しているが、今後はDRONE FUNDの既存投資先との協業なども十分に考えられるとのことで、新たなニュースがいまから楽しみである。