ドローンが遠く離れても、向こうでもう一人の操縦者が受け取ってくれる安心感

 次のテーマとなった「現場の作業者が楽になることはありますか?」では、特にM300 RTKで新たに導入されたデュアル制御が話題に上った。「これまでの送信機とドローンが1対1の関係では、ドローンが自分から離れれば離れるほど操縦者としては不安だった。それがデュアル制御になると、むしろ遠くなるほど反対側にいる仲間が待っていてくれる。こちらからの電波が細くなっても、もう一人の操縦者からの電波が太くなる。これは本当に骨身にしみるくらいありがたい機能だ」と水沼氏は熱く語った。

 また中村氏は、自らの経験を踏まえた例を紹介。「何百メートルも続く橋を5mくらいの離隔で撮影するといったフライトでは、機体が自分から離れれば離れるほど、橋に近づいているように見えてくる。私の場合、それができるのはギリギリ500mまで。しかしデュアル制御であれば、500m先で機体の操縦をもう一人のパイロットにバトンタッチできる。今までなら距離を区切っていた作業が、より長い距離でも安心してできて効率がいい」と説明した。

2人のオペレーターが同等の権限で操縦を受け渡すことができるデュアル制御。水沼、中村両氏がこの機能について、長距離飛行での安心感があると訴えた。

 さらに水沼、中村両氏は、実際にドローンを飛ばす現場での経験を踏まえ、M300 RTKが備えている機能を紹介。水沼氏は「プライマリーフライトディスプレイ(PFD)は様々な情報を一元的に表示してくれるので、機体からほとんど目が離せないような時にでも情報が見やすくなった。さらに新しい送信機は、何かあったら振動で注意喚起を行ってくれるのがとてもありがたい」と語る。また中村氏は、「機体の電源を切らずにバッテリー交換ができるホットスワップは、ミッションを止めなくていいのが便利。バッテリーのロックも、シンプルな構造ながら確実に操作できる。また、送信機もホットスワップができるため、生中継のように映像を途切れさせることができないときに有効だ」と説明した。

機体の進行方向や速度、高度、周囲の障害物の情報などが一元的に表示されるプライマリーフライトディスプレイ(PFD)。

「 “こうだったらいいのに” が実現した、操縦している人に優しいソリューション」

 パネルディスカッションの最後のテーマは、「M300 RTKの安全性に関する取り組みについて」。DJIの中村氏は「いままでの機種ではビジョンセンサーだけ、赤外線センサーだけと、どちらか一方だけだった。M300 RTKではその両方を前後左右上下のすべての面に装備している」と、6面に装備された衝突防止センサーについて説明。今後販売予定のレーダーを使えば、さらに高い精度で周辺の環境を観測できるようになるという。

 また中村氏は、日本仕様では最大8kmという伝送距離を実現したOcuSync Enterprise伝送システムについて、「伝送距離が今までより長くなっているが、遠くに飛ばせるというよりも、近距離で切れづらいものを追求した結果だと思ってほしい」と説明。水沼氏はこうしたさらに高まった安全性に加えて、「これまで “こうだったらいいのに” という点を改良してくれていて、総合的に操縦している人に優しいソリューションになっている」とM300 RTKとH20シリーズを評し、セミナーを締めくくった。

セミナー後半ではNSi真岡代表の⽔沼和幸⽒(右)、DJI JAPANのオフィシャルパイロットである中村佳晴⽒(中)が登壇し、本誌編集⻑の河野(左)がモデレーターとなって、パネルディスカッションを⾏った。