2020年5月8日、DJIは、最先端の産業用ドローンプラットフォームであるMatrice 300 RTK(以下M300 RTK)と、ハイブリッドマルチセンサーカメラZenmuse H20シリーズを発表した。本製品は5月中旬より出荷開始予定だ。推奨の基本製品構成は「Matrice 300 RTK+Zenmuse H20T+DJI Enterprise Sheild(一年間)」となっている。Matrice 300 RTKの参考価格は約95万円(バッテリーと充電器は含まれない)であり、Zenmuse H20シリーズの参考価格は約45万円からである。なおバッテリーなどのアクセサリー類は、基本製品構成には含まれていない。

カメラを3台装着したM300 RTK。左下はZenmuse H20。

 DJIは、このオールインワンのハイテクソリューションを開発することで、これまでの作業や業務領域の可能性を広げ、空中での正確な点検、調査、データ収集ミッションを実現するという。

「M300 RTK飛行プラットフォームとZenmuse H20カメラシリーズは、法人のお客様により安全でスマートなソリューションを提供します。このソリューションは、産業用UAVソリューションの基準を刷新し、公共安全、警察・消防、エネルギー、測量やマッピング、さらには重要なインフラの点検全体の運用を大幅に強化します」と、DJIコーポレートストラテジー担当シニアディレクター クリスティーナ・チャン氏は述べている。

DJI MATRICE 300 RTK

 M300 RTKは、最新の航空技術、高度なAI機能、6方向検知と測位技術システム、UAV状態管理システム、55分間の長時間飛行を組み合わせた製品である(※1)。AES-256暗号化と保護等級IP45の耐候性筐体に加えて、まったく新しいOcuSync Enterprise伝送システムが組み込まれたこのドローンプラットフォームは、3チャンネル(※2)で1,080p動画伝送(※3)、最大伝送距離15kmを実現する(※4)。多様な用途に対応するM300 RTKは、最大3つのペイロードを同時にサポートし、最大2.7kgの積載能力を備えている。

 ShellのRobotics Theme LeadのAdam Serblowski氏は、次のように述べている。「石油およびガス業界で働く私たちのチームにとって、パフォーマンスと安全性は必須です。DJI Matrice 300 RTKは、既存のDJI製品の理想的なアップグレードであり、ドローン利活用のメリットをさらに高めるものです。DJIとの生産的なパートナーシップは、エネルギー産業における安全性の向上を継続的に支援するものです」

M300 RTK(ペイロードなし)

※1 実際の飛行時間は、環境やペイロード構成により異なる場合がある。
※2 各送信機は2つの配信周波数帯に対応している。3つの配信周波数帯チャンネルは、デュアル送信機モード時のみ対応する。
※3 ドローンに搭載したペイロードにより異なる。
※4 障害物、電波干渉がなく、FCCに準拠している場合(日本国内は8km)。最大飛行距離の仕様は、無線の接続強度とレジリエンス(復元力)を踏まえた概測になる。許可がない限り、常に目視可能な場所でドローンを飛行させること。

より効率的なデータ収集

 M300 RTKとZenmuse H20シリーズのソリューションを組み合わせることで、2種類のインテリジェントなデータ収集方法が実現した。

スマート ピン&トラック (※5):調整されたミッションでの空中情報や同期を強化するインテリジェント機能。 ピンポイント は、ターゲットとなる対象物にマークをつけ、正確な位置データをもう1人の操縦者に即座に共有したり、必要に応じてDJI FlightHub経由で地上チームに情報共有することができる機能である。 スマートトラック は、離れた距離からでも動く対象物を自動で検出し、追跡しながら対象物の動的な位置をリアルタイムで同期できる。

スマート点検 :送電線、鉄道、石油やガスプラントの点検といった定期的なデータ収集ミッションを最適化するために開発された新しい機能セット。 ライブミッション記録 は、リアルタイムで自動ミッションのデモ飛行を記録する。 AIスポット確認 (※6)は、毎回正確に同じ位置からデータを収集できる機能で、自動ミッションの精度を大幅に改善する。デモ飛行中に撮影したウェイポイント点検ミッションの写真を記録後、操縦者や点検者は特定の対象物にマークをつけることができる。次回の自動飛行ミッション中に、AIアルゴリズムがマークされた被写体と現在のライブビューを比較することでカメラの方向を補正し、正確で矛盾のないデータの取得が可能になる。 Waypoint 2.0 は、最大65,535個のウェイポイント(通過点)を設定できるよう改良された飛行計画システムで、連続した一連のアクションやサードパーティー製ペイロードなどに対応している。

※5、6 この機能は、機体がZenmuse H20シリーズのペイロードとペアリングされている場合にのみ使用できる。

航空機レベルの状況認識力

 現在運行されている航空機にヒントを得たM300 RTKには、PFD(プライマリー フライト ディスプレイ)が搭載され、リアルタイムの飛行情報と航行情報を1つのディスプレイに統合して表示する。M300 RTKのPFDは、高度や速度などの標準テレメトリデータに加えて、飛行中に近くの障害物を視覚化する障害物データを提供するため、操縦者は必要に応じて飛行軌道を調整することができる。こうした機能強化により、操縦者は機体を追跡しながら、同時に状況認識力をさらに高め、安心・安全な飛行を確保することができる。

様々な制御を指先だけで実現

 DJIの産業用ドローンプラットフォームに新しく導入された新機能、M300 RTK専用の高度なデュアルオペレーターモードは、安全性、信頼性、柔軟性を高めながらミッションの遂行を可能にするマルチパイロット制御プロトコルである。M300 RTKを2人の操縦者が制御すると、各操縦者に同等のアクセス権を与えて飛行制御の優先順位を取得する。優先順位の切り替えは、DJIスマート送信機(業務用)の一連のアイコンで表示される。もし1人の操縦者に問題が発生したり、あるいは送信機のバッテリー切れや接続不良が発生した場合、もう一人の操縦者がM300 RTKおよびそのペイロードを完全に制御できるようになる。また、新しい操縦者を訓練する場合、教官/主操縦者パイロットは必要に応じて、安全に飛行制御を引き継ぐことができる。

デュアルオペレーターモード

安全性と信頼性の向上

 M300 RTKは、安全性と信頼性が強化され、新機能が追加されている。

AES-256暗号化 :コマンド&コントロールアップリンクおよびビデオ送信ダウンリンクの安全なデータ送信を実現

AirSense(ADS-Bテクノロジー) :空域の安全性を強化

衝突防止ビーコン :特に低照度環境下での機体の視認性を向上

IP45保護等級および自己発熱型バッテリー :悪天候条件用(-20〜50℃)

6方向検知&測位技術システム :水平方向に最大40mの検知範囲を実現し、DJI Pilotアプリで機体の検知動作をカスタマイズするオプションも用意されている

 現代の旅客機と同様に、M300 RTKは統合型UAV状態管理システム(UHMS)を導入し、フリート(航空隊)のメンテナンスを最適化する。機体のフライトデータを初回から全て記録し、さらにドローンのハードウェアとソフトウェアの両システムを利用して現在の機体性能を把握した上で、今後のメンテナンスの判断材料にする。この新しいシステムを活用することで、機体の重要システムすべての概要を確認し、フリート全体でファームウェア更新の管理、飛行時間の追跡、飛行任務を確認できる。

Zenmuse H20シリーズ

 M300 RTKが規定する新しい基準に合わせて、DJIは、ミッション効率を改善する新しいカメラペイロードを発表した。このZenmuse H20シリーズは、DJI初となるハイブリッドマルチセンサーソリューションを実現。効率的な時間管理と多層的な視覚にすぐにアクセスできることが重要な産業用途および公共安全ミッションのため、あらゆる映像を撮影できるようになる。H20シリーズはIP44保護等級に分類され、どの方向からの水しぶきからも筐体を保護する。

Zenmuse H20

 H20シリーズには2つのバージョンがある。H20は、20MPのハイブリット光学23倍ズームカメラ、12MP広角カメラ、3m~1,200mの距離をカバーするレーザー距離計を搭載したトリプルセンサー。H20Tは、640×512放射分析サーマルカメラを加えたクアッドセンサーである。高い熱感度と30fpsの動画解像度により、操縦者は人の目では見えないものを捉えることができる。

Zenmuse H20T

スムーズな対話のための統合型ユーザーインターフェイス

 操縦者が一度に複数のセンサーを操作できるよう、付属のDJI Pilotアプリのインターフェイス(UI)は、数回タップするだけでカメラをすばやく切り替えることができるようになっている。また、広角カメラまたはサーマルカメラの映像上でズーム視野(FOV)をプレビューできるため、ズームインとズームアウト処理を簡単に行うことができる。

クイック撮影モードによる最大級の柔軟性

 Zenmuse H20シリーズは、マルチセンサー統合UIデザインにより、広角カメラ、ズームカメラ、サーマルカメラをスムーズに切り替えることができる。さらに、一刻を争うミッションで使用する場合に最大級の柔軟性を実現する機能も搭載している。 高解像度グリッド写真 は、カスタムグリッドを使用することで、定義付けされた被写体の詳細な画像を一度で撮影することができる。また、画像は後で詳しく確認するために保存することができる。

ワンクリック撮影 :カメラビューを手動で切り替えたりミッションを繰り返したりする必要なく、最大3つのカメラで動画または写真を同時に撮影する。

夜景モード :照度条件が最適でなくても、よりクリアな可視性を得ることができる。

価格と販売時期

 詳細な販売価格、予約注文はDJI Enterprise正規販売代理店まで。製品の出荷は、2020年5月中旬より開始予定である。

▼DJI Enterprise正規販売代理店
https://www.dji.com/where-to-buy/enterprise-dealers

推奨基本製品構成と参考価格

推奨基本製品構成 :Matrice 300 RTK+Zenmuse H20T+DJI Enterprise Sheild(※7)一年間
機体本体参考価格 :約95万円(バッテリーと充電器は含まれない)
Zenmuse H20シリーズ参考価格 :約45万円から

 バッテリーなどのアクセサリー類は、基本製品構成には含まれない。

DJI Matrice 300 RTK 製品ページ
https://www.dji.com/jp/matrice-300

DJI Zenmuse H20シリーズ 製品ページ
https://www.dji.com/jp/zenmuse-h20-series

※7 DJI Enterprise Shieldは、包括的にDJI Enterprise製品を保護するために提供する有償保護サービス。衝突/水没/信号干渉などが原因で発生した事故による製品の損傷に対し、一年間回数無制限の交換サービスまたは無償修理サービスのオプションを提供している。https://enterprise.dji.com/jp/enterprise-shield

オンラインセミナー

 5月19日11時より、M300 RTKおよびZenmuse H20シリーズの主要な機能と利用用途をオンラインセミナーで学ぶことができる。受講は無料。事前登録を受付中。

▼DJIオンラインセミナー:新製品 Matrice 300 RTK & Zenmuse H20シリーズのご紹介
https://attendee.gotowebinar.com/register/2297092402778929422