2020年1月29 日から3日間にわたって、福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールド(RTF)において、総務省消防庁の「ドローン運用アドバイザー育成研修」が実施された。この研修は総務省消防庁が進める「災害対応無人航空機運用推進事業」の一環で、全国の消防本部でドローンの運用に携わる消防職員に対して、3日間の研修を通じて座学と訓練を行い、「ドローン運用アドバイザー」として認定するというものだ。今回は全国15の消防本部から、それぞれドローンについて指導的立場にある消防職員が集まり、RTFの市街地フィールドや瓦礫・土砂崩壊フィールドを使って、実際の災害対応を想定した、実践的な訓練を行った。

全国の消防にドローンの配備を進める総務省消防庁

 ドローンの社会実装が進む中、消防分野でもドローンの普及が進んでいる。2019年6月現在、全国にある726消防本部のうち3割弱に相当する、201の消防本部がすでにドローンを導入しており、66本部が導入を予定している(総務省消防庁調べ)。しかし、未導入の消防本部は459あり、総務省消防庁としては全国の消防本部に導入を進めたい意向だ。
 日本の消防は地方自治体が担うことと定められているが、各自治体の意向や財政状況によってその温度は異なり、一律に国の意向が反映されるというわけではない。しかし、総務省消防庁ではドローンが有効な消防力の一つになると認識しており、早くから“消防ドローン”の普及を進めている。
 2016年には緊急消防援助隊の資機材として、さいたま市と千葉市の消防局に対して試験的にドローンを配備。さらに2018年からは全国20政令市の消防本部(消防局)に対して無償使用という形で配備している。緊急消防援助隊は大規模災害が発生した際、自治体消防では対応できないような場合に、消防庁長官の求めに応じて他の自治体消防が隊を編成して出動するもので、1995年の阪神淡路大震災の教訓を踏まえて創設された。
 この緊急消防援助隊のドローンは、昨年の台風19号で長野市の千曲川が氾濫した地域に、新潟市消防局の部隊が駆けつけ、ドローンを飛ばして浸水状況の確認などを行っている。総務省消防庁では2019年度補正予算でも、さらに15機を導入して、全国の消防本部に配備をする予定だ。
 また、消防本部と並ぶ消防組織が消防団だ。この消防団にもドローンの導入を進めるべく、総務省消防庁では2017年度から全国の消防学校に対して、消防団の訓練用としてドローンを無償貸与。同時に消防団員に対してドローンの訓練を行っており、消防団が訓練を通じてドローンの有効性を認識してもらうことを目的としている。

消防大学校で普及啓発活動も担うドローン運用アドバイザー

 すでに200を超える消防本部でドローンの利用が始まっているが、裏を返せば7割の消防本部ではドローンが導入されていない。そこで、こうしたドローン未導入の消防本部等に向けて普及啓発を進めるために、ドローン運用アドバイザーを育成するというのが、災害対応無人航空機運用事業の狙いである。
 今回のドローン運用アドバイザー研修は、2019年度から5年間かけて実施される研修の1回目。初回となる今回は全国の消防本部から15人の消防職員を集めて研修を実施。2020年度以降は毎年15名ずつ2回の研修を行い、5年間で合計135名のドローン運用アドバイザーを育成する計画だ。
 アドバイザーの認定を受けた消防職員は、所属の消防本部に戻ってドローンの運用について指導などで訓練の成果を活かすだけでなく、消防大学校でドローン未導入の消防本部に所属する消防職員に対して、毎年12人のアドバイザーが普及啓発活動を行うことになっている。
 今回、福島ロボットテストフィールドで実施された3日間の研修。参加した15人の消防職員は、それぞれ所属する消防本部でドローンを運用しており、さらに指導的立場にある。座学は事前にeラーニングを用いて各消防本部で学習を行い、研修の初日に学習成果の確認として試験を実施。実技はこれまでにも全国の消防本部に対してドローンの操縦訓練等を行ってきたセンシンロボティクスの講師が担当する形で訓練が進められた。

開催地の地元となる双葉地方広域市町村圏組合消防本部をはじめ、北は秋田市から南は大分市まで、13消防本部の15人が参加。

 初日は雨天のため屋内体育館を使用し、GPSの電波が入ったり入らなかったりする状態での飛行や、シミュレーターによる操縦、さらには機体との距離感を養うといった訓練を実施。2日目、3日目は好天に恵まれ、市街地フィールドや瓦礫・土砂崩壊フィールドで、要救助者に見立てた人が建物や瓦礫などに隠れ、それを上空のドローンから可視光・赤外線カメラを駆使して捜索救助する訓練を行った。また、総務省消防庁が試験的に導入した、NIST(National Institute of Standards and Technology:アメリカ国立標準技術研究機関)が提唱するドローン操縦者評価メニュー「STM for sUAS」を使用し、ドローンを使って迅速に要救助者を捜索するための操縦・撮影訓練なども実施している。

屋内体育館ではGPSの電波が入りづらい中での飛行訓練や、シミュレーター訓練などが行われた。
屋外では市街地や瓦礫・土砂崩壊フィールドを使って、マニュアル操作での基礎訓練や捜索訓練などを実施。
総務省消防庁が用意したNISTの「STM for sUAS」を使った訓練も行われた。
上空から瓦礫等に見立てた障害物に隠れている要救助者を捜索する訓練の映像。

 今回の研修において運営本部長を努めた総務省消防庁の喜多光晴氏は、「総務省消防庁では3年前から全国の消防本部で、どのようにドローンを活用しているか、ということを調査している。ドローンの導入状況でいえば、初年度の70本部に比べて2019年度は201本部と増えているが、全国726消防本部のわずか28%に過ぎない。総務省消防庁としては、ドローンがとても有効な資機材であると認識しており、いずれは全国の消防本部で使ってほしいと思っている。それだけに、今回も含めて今後5年間のこの研修で、現在ドローンを活用している消防本部の知見と技術のレベルを引き上げ、消防ドローンのスペシャリストを育てていきたい」と語った。

今回のドローン運用アドバイザー育成研修の狙いを話す、総務省消防庁 消防・救急課の喜多光晴 消防水利専門官 併任 課長補佐