2020年1月22日、ジャパン・インフラ・ウェイマーク(以下JIW)は、米スタートアップ企業のSkydioと共同開発した小型の点検用ドローン「Skydio R2 for Japanese Inspection」(以下J2)を使い、日本と東南アジアで橋梁点検サービスを提供する、パートナーシップ契約を締結したと発表した。同社ではさまざまな点検領域でJ2を活用する点検トライアルのテーマを同日から公募し、有償トライアルを行っていくとしている。

ジャパン・インフラ・ウェイマークとSkydioが共同開発したSkydio R2 for Japanese Inspection。

点検用途にカスタマイズされたJ2

 JIWは2019年4月に、通信を中心にした社会インフラ・設備のドローン点検を担う企業として創業した。NTT西日本グループで培った点検技術やオペレーションのノウハウを活かし、ACSLと共同開発した独自の機体を使い、通信鉄塔、橋梁に付随する管路、法面などの点検を行っている。そんなJIWが2020年度からのサービス機材として新たに投入するのがJ2だ。

J2はロータを上下に2つずつ備えた独特なスタイルを採用。機首にジンバル付きの1200万画素カメラを備えている。

 Skydio社は2018年にVisual SLAM技術を駆使し、自動的に障害物を回避して飛行できる「Skydio R1」を発表し話題となった。さらに2019年秋に発表した第2世代のドローン「Skydio R2」は、機体の上下面に搭載したわずか6つのカメラで撮影した映像をもとに、ドローンに搭載した高性能ビデオプロセッサNVIDIA Tegra TX2でリアルタイムに3Dの点群を生成。このデータをもとに障害物を回避しながら飛行することができる。

 JIWが新たに採用するJ2はSkydio R2をベースにして、点検用途に適した仕様に変更。R2の機体先端部のカメラは3軸ジンバルによって上向き45度、下向き110度まで角度が変えられるが、J2では上向きの角度を90度まで拡大。これにより建物の天井部や橋梁の床版裏といった撮影を可能にしている。

機体下面には機首と後部ローターアームの3箇所にカメラを装備。この3つのカメラと上面の3つのカメラで撮影した、合計4500万画素の映像をリアルタイムに処理して、3D地図を作成している。

 また、R2はVisual SLAMの障害物回避機能によって、障害物に1〜1.5m接近すると回避する経路をとって飛行する。しかし、この障害物との離隔によって点検ではトラス構造物や狭隘部にSkydio R2を進入させることができない場合が増えてしまう。そこでJ2ではこの障害物回避の距離を約50cmとすることで、より狭い場所での飛行を可能としている。

屋外で得たGNSSの位置情報からVisual SLAMによって屋内の絶対位置を推定

 J2はR2同様、機体の上下の6つのカメラで撮影した映像をもとに生成した3D点群の地図を頼りに、障害物を回避しながら飛行する。そのためGNSSの電波が入らない屋内でも安定した飛行が可能だ。このVisual SLAMは非常に優秀で、機体の向きを制御するコンパスも不要としている。

 対象物を写真撮影し、オルソや3Dモデルを生成して、損傷部位を確認する点検では、写真撮影時のドローンやカメラの位置や向きの情報が欠かせない。しかし上空から降ってくる衛星の電波が入らない屋内では、GNSSの位置情報を利用した撮影ができない。J2は衛星の電波が受信できる屋外などでGNSS情報を得ることができれば、その位置から電波を受信できない屋内に移動する過程で、Visual SLAMで常にドローンの位置を把握しているため、屋内でも正確な撮影時の位置情報を得ることが可能となっている。

J2の操作はスマートフォンアプリで行う。また、専用の2スティックコントローラーも用意されている。

 J2のサイズはDJIのMavic 2シリーズよりふたまわりほど小さく、機体重量も約775g(バッテリー含む)と非常に軽量だ。バッテリーは4280mAhとこの機体サイズの割にはとても容量が大きく、約23分の飛行時間を実現。バッテリー交換の機会を削減し、効率的な点検作業に貢献する。

 また、この機体の軽さは、万が一、機体が対象物に接触したり墜落した場合に、被害を小さくしてくれるメリットも生んでいる。さらにJ2のバッテリーは、マグネットで機体に装着する設計となっており、非常に大きな衝撃を受けた場合にはバッテリーが機体から分離して、衝突エネルギーを小さくする。

容量4280mAhのリチウムイオンバッテリーは重量280gと、機体に対して重量がある。そのため大きな衝撃を受けるとバッテリーが外れるようになっている。

 JIWではこうしたJ2のメリットを、さまざまな分野の点検に活用していくとしている。また、そのために1月22日から3月末にかけて、J2を活用した点検トライアルテーマを公募(有償)している。