ジャパン・インフラ・ウェイマーク 柴田 巧CEOと、Aerodyne Group代表 Kamarul A. Muhamed氏

 ドローンを活用したインフラ点検ソリューションを提供する株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(本社:大阪市中央区、 代表取締役社長:柴田巧、 以下「JIW」)とマレーシア発のドローンソリューションカンパニーのAerodyne Group(本社:マレーシア クアラルンプール、 代表者:Kamarul A. Muhamed、 以下「ADHQ」)は、送配電設備のドローン点検サービスに向けた業務提携を発表した。

NTT西日本グループのインフラ点検を事業化したジャパン・インフラ・ウェイマーク

 ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)は、2019年4月1日にNTT西日本グループが保有する情報通信インフラの維持管理ノウハウと、ドローンを活用した点検実績を強みとした事業を目的に設立された。

 発表会に登壇した柴田社長は、設立までに西日本を中心に数多くの実証実験や実サービスに取り組み、橋梁点検や法面計測に鉄塔点検サービスを展開している実績を説明する。その一方で、「日本の送配電設備分野における点検には、法規制の問題と技術的な課題から、 ドローン導入が進んでいません」と柴田社長は話す。

 JIWの試算によれば、鉄塔を利用した通信設備と送配電設備のインフラ点検市場は、国内で122億円の規模がある。そのうちの22億円にあたる通信設備のインフラ点検では、JIWとしてすでにサービスを提供している。

 残る102億円の送配電設備に関しては、未提供の状況にある。電力会社がドローンを活用した送配電設備の点検を実現できない背景には、3つの大きな課題があると柴田社長は指摘する。その3つとは、法規制にオペレーション、そして技術ノウハウ。法規制の面では、ドローンの目視外飛行や第三者上空の飛行に関する制限がある。また、オペレーションにおいては、日本の現場に即したオペレーションの確立や、ドローン空撮への事前の申請や近隣住民への対応などが求められる。そして、技術ノウハウでは、送配電ケーブルと鉄塔を空撮する技術に加えて、撮影した画像を解析する技術が必要になる。

 こうした課題の中で、2019年6月21日に公開された「空の産業革命に向けたロードマップ2019」の中で、有人地帯での目視外飛行の目標時期が2022年に設定されたことで、法規制の問題はクリアできるとJIWでは判断した。そこで、残る2つの課題のうちの「技術的課題」を突破するために、「単独でノウハウを蓄積する」か「強力なパートナーを探す」という選択から後者を選んだ。そして、送配電設備のドローン点検において世界で高い評価(*1)を得ているADHQとの業務提携を決断した。

 具体的な提携の内容は、JIWが保有するオペレーショナル・エクセレンス(申請、 リスクアセスメント、 問題検出、 レポート提出など)とADHQが提供する送配電設備の点検ノウハウ(空撮・点検ノウハウ、 点検ソフトウェアなど)を組み合わせ、 日本の商習慣に最適な電力設備向けドローン点検サービスを共同で開発する。また、既存のADHQが提供する全サービスをJIWが日本市場で独占的に販売する。

提携の概要

年間6万フライト、 25万設備、 5.5万キロの点検を実施

 ADHQはマレーシアのクアラルンプールで2014年に創業し、アジアを中心に世界25か国で様々なインフラの点検実績を持つ。送配電設備において、年間6万フライト、25万設備、 5.5万キロの点検を実施している。

 ADHQの点検は、世界で約30チームが活動していて、マルチコプターを中心に約10kmから50km範囲の電線や鉄塔を撮影している。また、VTOLではLiDARを搭載して最長で500kmの距離を飛行した実績もある。同社は創業からわずか5年で、25カ国で点検サービスを提供し、スタッフ数は270名になり、世界ランキングで4位を誇る。こうした実績を高く評価して、JIWは提携を決断した。

 今後の両社の役割分担は、以下のチャートのようになる。

両社の役割分担

 対象となるインフラ点検のソフトウェアやAIの開発と、ドローン空撮および点検プロセスのノウハウ提供は、ADHQが担う。日本国内でのサービス実施や各種のオペレーションは、JIWが担当する。

 この第一段階の取り組みは、2019年第二四半期からスタートし、日本市場の送配電線と鉄塔のシェア獲得を狙う。2020年の第一四半期からは、フェーズ2の取り組みとして、対象サービスの拡大と海外展開を推進する計画。洋上構造物やプラントに管路などへサービスを拡大し、JIWとしての海外にも展開する。さらにフェーズ3では、2020年の第三四半期から低コスト構造なサービスを提供する体制も構築していく。具体的には、日本国内でマレーシア留学生などによる空撮と点検センターを開設する。

今後の取り組み

 こうした取り組みを通して、JIWは2020年までに国内電力設備の点検でシェア30%と30億円の売上目標を目指す。また、2025年までの海外売上を20%まで伸ばし、点検センターの技術者は100人規模を目標としている。

 ADHQのKamarul A. Muhamed氏も、「早い、安い、うまい、安全にフォーカスして、我々のソリューションとイノベーションを提供します」と話す。

*1 Frost & Sullivan社の選ぶ Asia-Pacific Best Practices Awards 2019にてAsia-Pacific Unmanned Aerial Vehicle (UAV) Services Company of the Yearに選ばれるなど、 世界で高い評価を獲得