2025年3月26日、Hondaは、同社の新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」発のスタートアップ「株式会社UMIAILE(ウミエル)」が設立されたことを発表した。

 UMIAILEは「“海の見える化”を通じて平和で豊かな地球を守る」ことを目指し、高速で水上を自律航行し海洋情報を収集する小型無人ボート「UMIAILE ASV(※1)」を販売するとともに、同ボートを用いて海象や海洋生態系、海底地殻変動をはじめとする海洋地質などの海洋データを収集し、分析・提供する事業を2025年4月に開始する。

※1 ASV(Autonomous Surface Vehicle):自律航行型無人船

写真:UMIAILE ASV(プロトタイプ)外観
UMIAILE ASV(プロトタイプ)
写真:水上のUMIAILE ASV(プロトタイプ)

 従来の有人船舶による海洋観測は、船舶の建造や運航にかかるコストが膨大なため、観測頻度・密度を高めることが難しく、得られる情報量が限られていた。UMIAILEは海洋観測の高頻度化・高密度化を目指し、小型無人ボートUMIAILE ASVを開発。独自の船体姿勢制御技術により、水上を高速で自律航行し、目的に応じた観測機器を搭載することで、風・波浪・潮位などの海象情報や海洋生態系、海洋地質などの海洋データを収集する。同社はUMIAILE ASVの機体販売に加え、2025年4月に日本国内の大学や研究機関向けのデータ提供事業を開始し、2030年以降は海外展開を視野に事業拡大を目指す。

小型無人ボート「UMIAILE ASV」

「UMIAILE ASV」の特長

潮の流れが速い海域でも長時間安定した観測が可能

 水中翼を用いた独自の船体姿勢制御技術により、高速・高効率な航行を実現。日本近海のような潮の流れが速い海域においても安定して海洋観測が可能。動力用パワーユニットには電動モーターを搭載しており、船体上面のソーラーパネルにより発電することで、長時間安定した観測を行うことができる。

目的に合わせて観測機器を搭載、幅広い観測ニーズに対応

 目的に合わせ、センサー・カメラ・ソナーなどの多様な観測機器を組み合わせて搭載することで、幅広い観測ニーズに対応する。例えば、地震が多発する日本近海の海底地殻変動を高頻度に観測することで、地震のメカニズム解明および今後想定される南海トラフ巨大地震などに対する防災・減災に貢献する。また、海洋生態系の調査やブルーカーボン(※2)の定量化など、活用範囲の拡大を目指す。

※2 ブルーカーボン:沿岸・海洋生態系が光合成によりCO₂を取り込み、その後海底や深海に蓄積される炭素。

複数のUMIAILE ASVを連携させ、高頻度・高密度の海洋観測を実現

 GNSSを活用し、海上でも自己位置を正確に測位しながら、事前にユーザーが設定したルートを自律航行する。多数のUMIAILE ASVを観測エリア一帯に配置することで、高頻度・高密度の海洋観測が可能。

複数のUMIAILE ASVがGPSで自己位置を把握しながらデータを収集するイメージ
UMIAILE ASV通信イメージ
海底の地殻変動を観測するイメージ
活用事例:海底地殻変動観測

UMIAILE 代表取締役 CEO 板井亮佑氏 コメント

 自身の技術やアイデアで地球を取り巻く社会課題を解決したいと思い、UMIAILEを起業しました。Hondaにおける電動モビリティやロボットの開発経験、自発研究テーマとして取り組んでいた船体姿勢制御技術から着想し、UMIAILE ASVを開発しました。海洋観測に課題を抱えるお客様に革新的なソリューションを提供することで、将来にわたって人々が安心して地球に住み続けることができるよう、UMIAILEは『海の見える化』に挑戦し続けます。

(左から)取締役 CTO 海野暁央氏、代表取締役 CEO 板井亮佑氏、取締役 COO・CSO 中島亮平氏