2025年3月19日、日本電気(以下、NEC)、Intent Exchange、ちちぶ結いまち、秩父市は、ドローン航路の商用サービス実現に向けた実証実験を行ったことを発表した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の事業の一環として実施した。

 従来、ドローンを運航する際には、地域の関係者との調整・周知や飛行経路のリスク評価などの手続きを個別に行う必要があった。ドローン運航者に代わって航路運営者にリスクアセスメントや地域関係者との調整・周知等が協調領域として集約されることで、運航会社の時間とコストを大幅に削減する効果が期待されている。

 この実証における航路運営者は、道の駅の運営会社などの地域事業者を想定しており、離着陸場や航路の安全性を管理して複数のドローン運航者にサービスを提供することを目指している。

 同事業では、ドローン航路を実現するために必要な、航路運営者のための航路設計機能や、ドローン運航者のための予約機能などから構成されるドローン航路システムを開発した。

ドローン航路のイメージ図
ドローン航路イメージ(出典:NEDO「ドローン航路ConOps(運用概念)案」)

実証内容

 航路運営者の事業モデルを検証するため、2025年2月、秩父市において実証実験を実施した。ちちぶ結いまちが地域に根ざした事業者として、道の駅に設置した離着陸場とドローン航路を管理し、物流や点検といった複数のドローン運航者のためにサービス提供することを想定し、検証を行った。

【各社役割】

ちちぶ結いまちドローン航路の航路運営
NECドローン航路に設置するシステム(立ち入り監視システム等)の提供
Intent Exchangeドローン航路システムの運用
秩父市地方自治体としてのドローン航路推進
作成されたドローン航路(地図)
作成されたドローン航路(太いグレーのライン)※開発中の画面 ※「国土地理院地図(タイル)淡色地図」から抜粋、一部追記

 ドローン航路システムは、航路運営者が地域関係者と調整した最大落下分散範囲を入力すると、利用する機体の落下分散を考慮して、落下許容範囲外には落下しないような航路を画定し、それをドローン運航者が共同で利用することができる。従来は、ドローン運航者自身が飛行経路ごとに落下分散を考慮した設計を行う必要があった。

 実証では、航路運営者による運用検証のほか、道の駅大滝温泉から秩父市大滝総合支所までドローン航路に沿ってドローンを飛行させ、LTE電波不感地帯対策などの検証を行った。

写真:荷物を搭載したドローン
実証実験の様子(物流用途での利用を想定した荷物を積載)

 今回の実証地となった道の駅は、施設の老朽化や周辺地域の人口減少に伴い、地域拠点としての役割の再検討が求められている。ちちぶ結いまちは、ドローン航路運営の拠点として新たなビジネスモデルを構築し、物流や災害時の緊急物資輸送、河川点検などドローンを活用した地域サービスの社会実装を進めるとしている。

 2025年3月25日には、秩父エリア・浜松市の同時開催で、ドローン航路の正式な開通および航路を活用した商用運航の開始を予定している。

 4者は、今回の事業モデルの確立を秩父市で進めるとともに、NECおよびIntent Exchangeは事業モデルを全国に展開するため、2025年度中の航路事業者への航路運営サービス提供を目指す。