大分県と宇佐市、NEXT DELIVERY、中津急行、ノーベル、セイノーホールディングス、ネオマルス、電通九州は、複数の荷主の商品を積み合わせて同じ納品先に配送する「共同配送」と、迅速な配送やコスト削減が期待される「ドローン物流」を組み合わせた新スマート物流SkyHub(スカイハブ)の長期実証事業に取り組んでおり、2025年1月30日、実証の様子を報道関係者に公開した。

 大分県「令和6(2024)年度ドローン物流地域実装体制構築事業委託業務」の採択事業として、NEXT DELIVERYと地域の物流事業者である中津急行が主体となり、ドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流SkyHubの地域実装の検討に向けて実施するものとなる。

写真:ドローンの後ろに並ぶ8人
(左3番目から)NEXT DELIVER取締役 青木孝人氏、大分県商工観光労働部長 利光秀方氏、宇佐市長 是永修治氏、中津急行常務取締役 藤井秀男氏、ほか事業連携事業者代表

 ドローン物流は機体費用をはじめドローンオペレーター等の人件費といった運航コストが高く、収益性を確保するのが難しいため、採算性に関する課題があった。そこで国は、2023年12月にレベル3.5飛行制度を創設し、ドローン配送の事業化を促進するための規制緩和を実施した。ドローン物流を地域実装するためには、さまざまな企業・団体が連携し、規制緩和を活用した「経費抑制」「収入増加」による採算性を確保しつつ、地域の事業者が担い手となり、災害時の迅速な対応と通常時の運用を両立できる、具体的かつ継続的なビジネスモデルに基づいた地域実装体制を構築していく必要がある。

 また、これまで個別配送していた複数の物流企業が、トラックやコンテナなどを共同化し、荷物をまとめて積み合わせて配送する「共同配送」も同時に行うことで物流コストを削減し、配送効率を向上させる。

 同事業では、大分県内をフィールドとして、共同配送とドローン物流を組み合わせ、人口減少対策や物流網維持、災害への備えといった地域課題の解決、地域特性を生かした持続可能なドローン物流の地域実装体制を構築・検証することを目的とする。

実施内容

 届け先が配達困難地域かつ災害時孤立可能性がある地域を想定し、平時の運用が災害時での迅速な物資輸送につながるという筋道を立てて実施。期間は2025年1月20日から3月14日までの約2か月間を予定しており、天候等の影響がなければ1日1便のドローン飛行を行う。機体は、エアロネクストとACSLが共同開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」を使用する。

 1月30日の報道公開では、複合レジャー施設である家族旅行村安心院(以下、安心院)から深見地区の個人宅までの片道約5.8km(約13分)をドローン配送した。

【実証実験の効果】

  • 既存の陸上物流とドローン物流との接続点となるドローンデポ(荷物の集積・配送を行う拠点)を安心院に設置し、共同配送やドローン配送のオペレーションを含めたその有効性を確認。
  • 飛行ルート上の電波状況は、途切れることなく、機体カメラによる歩行者等の視認もしっかりと確認でき、運航上の問題は生じていないことから、実装を見据えた運航が可能。
  • 天候等の影響が少なかったことから、2025年2月7日時点でドローンの飛行回数は10回に上る。利用者へ十分なサービス提供を行うとともに、ドローン配送への認知度向上につながっている。
  • 中津急行を主体とした、地域特性を生かした持続可能なドローン物流の地域実装体制を構築・検証。
写真:複数のカゴ台車に仕分けされた荷物
安心院内の様子。共同配送用に各物流事業者から集められた荷物を配送地域別に仕分けた状態
写真:荷物をトラックの荷台に積み込む様子
安心院前で荷物を積み込む様子(ドローンでの配送物以外は陸上輸送)
写真:ドローンの上面が開き、機体内部に荷物を入れる様子
ドローンに荷物を積み込む様子(安心院・裏)
写真:離陸するドローン
ドローンが離陸する様子(安心院・裏)
写真:ドローンが荷物を地面に置き、飛行する様子
個人宅に配送される様子(個人宅前駐車場)