2024年12月3日、Liberaware(以下、リベラウェア)は、福島国際研究教育機構(以下、F-REI)が公募し、千葉大学が受託した令和5(2023)年度「困難環境下でのロボット・ドローンの活用促進に向けた研究開発」の委託事業を、2023年に引き続き再委託として受託したことを発表した。

 この事業は、千葉大学を中心に、放射線計測の専門機関である日本分析センターを加えたコンソーシアムが進めている研究開発業務において、ドローン開発の業務を再委託としてリベラウェアが受託し実施している。

航空写真とSfMデータ
左:航空写真(国土地理院 2010年時)、右:リベラウェア SfMデータ(2024年)

 F-REIは、複合災害にあった福島および東北での経験をもとに、今後生じることが懸念されるさまざまな災害による困難環境下におけるロボット・ドローンの活用範囲拡大を図り、また、多数のロボット・ドローンによる協調作業を実現する技術の研究開発を行うことにより、災害時の対応力の向上を目指している。さらに、水中や山中などの自然環境下において、人的な安全性を担保した状況での各種調査を実施する手段としてのロボット・ドローンの実用化にも取り組んでいる。

 同事業では、森林などの自然環境において、安全で正確、省コストで調査を行うことを想定したロボット・ドローンに必要となる技術の研究開発を行う。さらに、樹木の育成状態の分布を森林内で調査しマッピングするなどの技術、および当該調査を安価に実現する技術について研究開発を実施している。

研究開発事業 基本情報

令和5年度「困難環境下でのロボット・ドローン活用促進に向けた研究開発事業」
テーマ(3)湖沼、森林内などでの調査に対応するロボット・ドローンの研究開発

実施課題 ①:3次元データによる樹木解析
ニューラルネットワークによる解析技術を、3次元データから幹形状を計測する技術に適用する。
ドローンに搭載できるレーザー技術を用い、森林内環境下でデータ取得を実施し、安定的なデータ取得に必要な飛行の改善点を明らかにする。
ドローンによって取得できた森林内3次元データを用いて樹木位置図を作成する。
実施課題 ②:森林内を飛行するドローンの開発
実施課題①に必要なドローン開発のため、試作機、改良機を用いて実験する。
現地実証においては、飛行安定性、森林内移動性、ホバリングの安定性に関するデータを取得し、森林内飛行技術の完成に寄与する。
実施課題 ③:ドローンによる空間線量計測
小型空間線量計をドローンに搭載する方法を開発。
森林内の空間線量をドローンによっても計測できることを実証する。

フェーズ1の結果・今後の展望

実施課題 ①
 樹木をレーザーで計測する手法とドローンで計測する手法を実施し、レーザーでの計測の方が優位であることを確認した。今後はレーザーでの計測の優位性の実証を行うため、飛行時の振動やノイズを加味したうえでの評価を行う。
実施課題 ②
 レーダーと気流を用いた障害物検知手法の開発にあたり、ミリ波レーダーを搭載したドローンによる、低照度環境下での飛行試験を実施し、障害物検知ならびに精度0.1mでの飛行を実現した。また、気流センサーを搭載したドローンによる、壁面付近での飛行実験を実施し、気流変化による気流感覚技術の開発可能性の検討を行った。今後は、センサーフュージョンを行い森林内での安定した飛行の実現、ならびに最適なセンサー配置の検討等を行い、気流感覚技術の開発を行う。
実施課題 ③
 ドローンに搭載して森林内の空間線量を精度よく測定するための放射線量計を製作し、詳細な空間線量分布マップの作成の見通しを立てることができた。今後は、さらなる小型軽量化やドローンへの搭載方法等の検証、および各種マップ作成やデータの同期方法などオペレーション周りの向上を目指す。


 この委託事業においてリベラウェアは、実施課題で用いるドローンの開発に取り組んでいる。森林を中心とした困難環境下におけるドローンの活用性を広げ、人が立ち入れないエリアや立ち入りが危険なエリアの調査をドローンに代替することで安全を確保し、省人化を実現する。将来的には、ドローンを活用した森林環境調査によってカーボンクレジット売買用データの収集を可能とすることを目指す。