2024年8月26日、NTT e-Drone Technology(以下、NTTイードローン)は、琵琶湖南端にある瀬田川洗堰(あらいぜき)において、河川利用者を見回りする広範囲な河川巡視へのドローン活用の効果検証を実施したことを発表した。放流量の増減操作に伴い、堰の上下流で水位と流速の変動によって生じる事故を未然に防止することが目的。検証では、片道1km超の安定飛行と操作室内からの目視外飛行を実現し、河川巡視業務の効率化に対して十分な効果を確認した。
国土交通省 近畿地方整備局 琵琶湖河川事務所は、瀬田川洗堰の管理および操作を行っているが、水辺利用者への注意喚起のため巡視にあたる職員の要員確保が課題となっている。また、将来的には同事務所内の操作室からドローンをコントロールし、室内モニターでリアルタイムに映像を確認するなど、人の判別が可能な仕組みの構築を見据え、セキュリティに配慮したドローンの導入を検討している。
NTTイードローンは、琵琶湖河川事務所発注の業務(受注者:東京建設コンサルタント)においてドローンに関する技術協力として関わり、2024年5月30日、河川巡視へのLTEドローン活用の効果検証を実施した。
【検証1】
遮蔽物や伝送距離により2.4GHz帯の通信のみで制御できなかったエリアに対して、LTEを通じて送信機への映像伝送と機体制御が可能な「ANAFI Ai」(仏Parrot製)が到達可能かを検証した。
その結果、遮蔽物や伝送距離により2.4GHz帯の通信のみで制御する機体では到達が難しい範囲(約800m先)を超え、約1km先でも十分に機体制御および映像伝送をANAFI Aiが行えることを確認した。
【検証2】
河川上空からANAFI Aiが捉えた映像を、琵琶湖河川事務所内へリアルタイムで映像配信し、水辺利用者や船舶の有無等を確認できるか検証を行った。
映像をANAFI AiからLTE経由で送信機へ配信した結果、web会議システムを活用した際よりも高品質なリアルタイム配信ができることを確認した。
【検証3】
琵琶湖河川事務所の操作室内からLTEを経由してANAFI Aiの操縦およびリアルタイム映像配信が可能かを検証したところ、屋外操作の良好な通信環境と比較しても確実な操作性や途切れることの無いリアルタイム映像配信を確認できた。
【検証4】
ANAFI Aiが撮影した映像に対する画像解析により、人・車両・船舶の自動検知が可能かを検証した(協力:IIU)。その結果、画像解析から高精度で河川内(岸辺含む)の人・車両・船舶を自動で検知できた。なお、検証では準備の都合上リアルタイム検知は試すことができなかったが、リアルタイムに自動検知することも可能。
今後、NTT東日本グループは今回の検証結果をふまえて、全国の河川事務所やダム管理者等に対して、ANAFI Ai等の機体やリアルタイム映像配信サービス、画像解析システムの紹介を強化し、新技術活用による河川巡視業務における課題解決に取り組む方針だ。