2024年5月14日、富山大学、九州大学、京都大学からなる研究チームは、エチオピア北東部・アファール凹地において、九州大学が開発した小型固定翼ドローンを用いた広域な航空磁気探査を実施したことを発表した。

 エチオピア北東部のアファール凹地は、3つのプレートの拡大境界(発散境界)(※1)が交わる三重会合点にある。陸上で見ることができる唯一の三重会合点であり、プレート拡大現象を探究するのに絶好のフィールドであることから、主に地球電磁気学的探査からプレート拡大軸域での地下構造とその形成過程を解明する目的で、Dubbahu-Manda Hararo RiftとTendaho Grabenの北部域を対象に、富山大学、九州大学、京都大学、山形大学、熊本大学、アジスアベバ大学、米国・ウェイン州立大学の研究者による国際共同研究として行ってきた。

※1 拡大境界(発散境界):プレートとプレートの境界で、隣り合うプレートが互いに離れていく運動をしている境界。

 エチオピア・アジスアベバ大学とエチオピア政府の情報ネットワーク・セキュリティ機関の協力のもと、約50km×50kmの対象地域に対して、2023年11月16日~20日の期間中に5回の飛行調査を行い(総飛行距離 約970km)、長さ50kmの7測線、長さ20kmの3測線で良好な磁気探査データを取得することができた。

 磁気探査とは、磁場の強度を測定する装置を用いて行う物理探査の一種。今回の探査では、小型固定翼ドローンに搭載した磁場センサーで測定し、広範囲の磁場強度の分布を明らかにした。取得した磁場強度の分布をもとに、地下の磁化構造の推定を進めている。

 小型固定翼ドローンによる航空磁気探査は、富山大学、九州大学、京都大学、山形大学、熊本大学、アジスアベバ大学の研究者による国際共同研究として2019年にエチオピアで初めて実施。その際はDabbahu-Manda Hararo Riftを主な対象として探査をしたが、ドローンに搭載した磁気測定システムの不調等により、良好な観測データは10測線中の3測線であった。固定翼ドローンの改良、探査実施方法の改善等を行うことで、今回の広域での飛行探査の成功につながった。

 九州大学の東野伸一郎教授がX-TREME Composite Japanの協力により開発した小型固定翼ドローン(Phenix LR)は、翼長3.2m、120ccガソリンエンジンを搭載し、GPS信号による自動飛行により時速100kmで約5時間の飛行が可能(燃料満載時)。2019年の飛行調査後に、荒地での離着陸のため脚の強化等の改良を加えている。機体先端に約1mのカーボンファイバー製パイプを取り付け、その先端にテラテクニカ製フラックスゲート磁力計(FLMG17)を設置し、磁場測定を実施。離着陸はラジコンによる手動、その後は設定したルートに従って自動飛行を行った。

 これまでの航空磁気探査データの解析結果は、5月下旬に開催される日本地球惑星科学連合2024年大会において発表する予定。プレート拡大境界に位置するアファール凹地中央部の地球電磁気学的な地下構造(※2)と、その形成様式に関して新たな知見が得られることが期待される。

※2 地球電磁気学的な地下構造:地球電磁気学的調査では、磁気探査により推定可能な磁気的性質を表す地下構造(磁化構造)と電磁探査により推定可能な電気的性質を表す地下構造(電気比抵抗構造)を推定する。磁化構造は、構成する岩石が生成されたときの地球磁場の情報を保持するとともに、現在の熱構造の情報も得られる。比抵抗構造は、その場の温度の高低や流体(水やマグマなど)の存在によってもたらされる不均質性を、電気の流れ易さ・難さの指標で描像する。