2024年4月16日、INFLUX(以下、インフラックス)は、長崎大学海洋未来イノベーション機構、長崎大学大学院工学研究科と、次世代型水中ドローン「アクアレモナ」を開発したことを発表した。

 海中でも潮流に影響されにくく安定して測定位置をコントロールする機能を搭載しており、藻場の3Dマップ化に成功。これにより正確な藻場の状況を広範囲に調査でき、藻場再生事業の効率化を図ることができる。また、3Dマップから藻場の正確な分布を知ることで、海藻のCO2吸収量測定精度が上がり、ブルーカーボン取引上のビジネスチャンスも広がるとしている。

次世代型水中ドローン「アクアレモナ」(イメージ)

藻場の3Dマッピング

 3者は、海洋環境保全と再生可能エネルギー発展の両立を目指す「藻場再生」への共同研究を進めている。アクアレモナは、海岸域における未踏領域の藻場生態系調査を可能にし、ブルーカーボンの定量化を実現するために設計された。

 アクアレモナは8つのスラスターを搭載し、全方向に移動が可能。交換式バッテリーで長時間運用できる。前方と下方に備えたステレオカメラと、音波を使った距離測定機能により、海藻と海底までの距離を測定し、海藻の高さと体積を算出する。

 潮の流れが複雑な海底は、手動で水中ドローンを操作して正確な地形を測定することは困難であったが、8つの強力なモーターとオプティカルフロー技術(※1)を用いた平面制御により、潮流の影響が少ない状態でホバリングし、水中での安定した位置保持を実現。複雑な潮流の中を自ら制御し、あらかじめ指定していたエリアを自走して藻場の正確な3Dマップを作製する。

※1 オプティカルフロー技術:動画や連続したフレームの画像において、ピクセルの移動ベクトルを推定するための手法。画像内の物体や領域の移動を検出し、移動ベクトルを算出することが目的。

 長崎県島原市の島原湾で検証実験を実施。自走機能を使用し、1m×1mのパイプフレームで作られた碁盤のマス目に沿って移動することで、沿岸の藻場の3Dマッピングを高精度で行うことに成功した。

左:藻場の撮影画像、右:3D化

 海藻の高さと体積を高精度に測定し算出するアクアレモナを活用することで、従来の人が潜っての測量や、潮流の影響を受けやすい既存の水中ドローンを用いて測量する方法と比べて、困難とされていた広い海域での正確な海藻のCO2吸収量を算出することが可能となる。ブルーカーボン形成の加速化や、ブルーカーボン取引における測定ツールとなることが期待される。

 ブルーカーボンとは、藻や水草、マングローブなどの海洋植物が光合成でCO2を吸収して海洋生態系が貯めこむ炭素のこと。ブルーカーボンを主に形成している藻場は、磯焼けなどの環境変化で年々消滅してきており、ブルーカーボンの保全は水産業において大きな課題となっている。

 ブルーカーボン形成を図ることは地球温暖化の要因となるCO2の増加を抑制するため、CO2吸収量を企業などが買い取れるブルーカーボンクレジット「Jブルークレジット」によって売買できる。インフラックスは、全国の漁業協同組合と連携・協働し、経済面においても持続可能な海洋事業、地域活性化を推進するとしている。

海洋植物の消失による貯蓄CO2放出イメージ