2024年2月26日、日立システムズは、宮城県女川町の町有林を対象として、森林調査の効率化を目的に、ドローンとAI解析ソフトウェアを活用した森林調査のDXに関する実証実験を行ったことを発表した。

 実証実験では、イメージワン、DeepForest Technologies、柳土木設計事務所・栁土地家屋調査士法人と連携し、ドローンを活用して町有林経営計画策定対象となる森林の樹木検出や樹種識別、林相区分図(林種や樹種など森林の各要素に着目して塗り分けをした地図)の作成などを行った。

 実際に森林に入って行う森林情報取得調査では19人日ほどかかる場所でも、ドローンとAI解析ソフトウェアを活用すると4人日程度で実施可能であることが分かった。これにより、短時間での詳細かつ正確な森林資源情報の取得や、経営計画の策定などに寄与するデータの作成が可能であること、業務工数やコスト削減を見込めることが確認できた。

 日立システムズは、ドローンの手配(空撮作業)も含めて対応する森林調査のDXを支援するサービスの提供を、2024年度中に開始するとしている。カーボンクレジット(※1)のひとつであるJ-クレジット(※2)創出のための、LiDAR(※3)搭載ドローンでの高精度な森林資源情報取得にも対応する予定だ。

※1 カーボンクレジット:企業が省エネルギー機器導入や森林の保護・植林などを行うことで生まれたCO2などの温室効果ガスの削減効果(削減量、吸収量)をクレジット(排出権)として発行し、他の企業などとの間で取り引きできるようにする仕組み。
※2 J-クレジット:CO2の削減量や吸収量をクレジットとして日本政府が認証する制度。
※3 LiDAR:レーザー光を照射し、その反射光が戻ってくる時間の情報をもとに、対象物までの距離や形などを計測する技術。J-クレジット申請のためにドローンを活用する場合は、LiDAR搭載ドローンを活用する必要がある。

 カーボンニュートラル(※4)の推進や、森林経営管理法に伴う森林経営管理制度(※5)などにより、適切に整備されていない森林に対して間伐や保全を行う動きが活発化している。その準備作業として森林調査が多くの場所で検討されている一方、人が森林に立ち入る森林調査には大きな労力や時間、コストがかかり、転倒や滑落の危険性もある。そのため、素早く安全で安価に森林調査を行う方法が求められている。

※4 カーボンニュートラル:CO2をはじめとした温室効果ガス実質排出量をゼロにする取り組み。
※5 森林経営管理制度:手入れの行き届いていない森林について、市町村が森林所有者から経営管理の委託(経営管理権の設定)を受け、林業経営に適した森林は地域の林業経営者に再委託するとともに、林業経営に適さない森林は市町村が公的に管理(市町村森林経営管理事業)をする制度。

実証実験の概要

 女川町との協創プロジェクトの一環として、日立システムズが取りまとめを行う形で実施した。実証実験では特に「森林組合などがすでに所有しているドローンで調査ができるのか」「AI解析ソフトウェアは(航空からの森林解析に関する専門的な知識がなくとも)使いこなせるか」の2点を中心に、ドローン調査が有効なものかを検証した。

実証実験期間
2023年11月21日~12月21日(ドローンフライトは11月21日・22日に実施)

対象地域
宮城県牡鹿郡女川町の2カ所の町有林
・女川町北東部の町有林(約7ha)
・女川町北部の町有林(約7ha)

 女川町の町有林のうち、町有林経営計画を策定中の森林を対象に、ドローンによる写真測量とLiDAR測量を実施後、AI解析ソフトウェア「DF Scanner」やレーザードローン用点群処理ソフトウェア「DF LAT」を活用することで、専門知識がなくとも、樹木検出や樹種識別、林相区分図の作成、各樹木単位の幹材積量(樹木の体積)推定といった森林資源情報をデジタル化することができた。林相の分析結果から、すべてスギだと思われていた場所が、実際にはヒノキやアカマツ、広葉樹もあることが分かった。

解析成果の一部

 また、実証実験の結果、多くの森林組合などが所有しているLiDAR非搭載型ドローンのデータでも、LiDAR測量データを用いた分析と比べて遜色ない林相の分析などが可能であることが分かった。加えて、実際に森林に入って行う実踏での森林情報取得調査では19人日ほどかかる場所でも、ドローンとAI解析ソフトウェアを活用すると4人日程度で実施可能であることが確認できた。

林相の分析結果