2024年4月1日、奈良市、KDDIスマートドローン、コミュニティメディカル、NEXT DELIVERYは、2024年2月26日から2月28日にかけて、レベル3.5飛行による処方薬配送および災害時の医薬品配送に向け、薬局を起点としたドローン物流の実証実験を行ったことを発表した。
レベル3.5飛行とは、無人地帯における目視外飛行（レベル3飛行）において、機上カメラの活用により立入管理措置（補助者や看板の配置）を撤廃し、操縦ライセンスの保有と保険加入により道路や鉄道等の横断を容易化したもの。
奈良市の東部地域は同市の約57%を占めるが、人口は約1万人で奈良市全体の約3%。そのうち65歳以上は約4,700人（高齢化率は約45.7％）と、奈良市全体と比較しても10ポイント以上高い（2024年3月時点）。
同市は2023年2月に東部地域の月ヶ瀬・柳生においてドローンを使った荷物配送の実証実験を実施しており、今回は同地域の課題の一つでもある地域医療において、高齢化などに伴い需要の増加が予想される医薬品の配送実証実験を行った。
実施内容
1. 処方薬配送の実証実験
ドローンを活用し、服薬指導から処方薬の受け取りまでを在宅で行う実証実験を実施した。
東部地域には5か所の診療所があり、その1～2割の患者が院外処方となっている。一方、同地域の調剤薬局は2店舗のみ。同地域から市街地までは車で約30分、遠い場所では1時間以上もかかる上、路線バスは約2時間に1本程度と限られており、薬局までの交通手段が課題となっている。
また、高齢化が進み、処方薬を取りに行くことが難しくなる住民が増えることが予想され、自宅などでの受け取りが望まれている。
実証実験は、オンライン服薬指導用の通信機器を所有していない患者を想定し、まずはひだまり薬局田原店から患者宅へオンライン服薬指導を受けることができるタブレットをドローンで配送。遠隔でオンライン服薬指導を行った後、ひだまり薬局田原店から患者宅へ処方薬をドローンで配送した。
飛行ルート：ひだまり薬局田原店⇆患者宅
飛行距離：片道約1.4km
配送物：処方薬
飛行時間：約4分
2. 災害時を想定した医薬品配送の実証実験
災害発生を想定し、薬局から東部出張所（二次避難所）へドローンによる医薬品の供給ルート確保の実証実験を行った。
奈良市では2024年1月、災害時に迅速な医療救護活動の展開を図るため、奈良市薬剤師会と「災害時の医療救護活動に関する協定」を締結。災害時には薬局等から救護所または避難所へ医薬品等の供給を行う。
2024年1月に発生した能登半島地震では、道路が寸断され陸送ができない地域に医薬品等の物資を配送するなど災害対応にドローンが使用されている。災害時、奈良市東部地域の山間部は、土砂崩れや倒木、道路の崩壊などで道路の寸断が想定される。
実証実験では、負傷者や孤立集落化を想定し、ひだまり薬局田原店から東部出張所（二次避難所）へ医薬品（消毒液、絆創膏、湿布薬、鎮痛剤）をドローンで配送した。飛行ルートを開通したことで、今後、GPSの座標を利用して薬局を起点としたドローンによる医薬品の配送が可能になる。
飛行ルート：ひだまり薬局田原店→東部出張所
飛行距離：片道約6.5km
配送物：医薬品（消毒液、絆創膏、湿布薬、鎮痛剤）
飛行時間：約15分
実証実験は、エアロネクストとACSLが開発した物流専用ドローン「AirTruck」用いてレベル3.5飛行で実施した。運航は、エアロネクスト子会社のNEXT DELIVERYとKDDIスマートドローンが行った。機体の制御には、モバイル通信を用いて機体の遠隔制御・自律飛行を可能とするKDDIスマートドローンの「スマートドローンツールズ」の運航管理システムを活用した。
今回の実証実験により、オンライン服薬指導と組み合わせたドローンによる処方薬配送オペレーションや、災害時の医薬品配送オペレーションを確認。電波は途切れることなく、周辺環境への影響も無かったことから、安全運航が可能な飛行ルートを開通できた。また、レベル3.5飛行により、実装を見据えた省人化や効率化の実現を確認した。
各者役割
| 奈良市 | 事業化検討、関係各所調査、フィールド提供等 |
| KDDIスマートドローン | プロジェクト統括、機体提供、運航 |
| コミュニティメディカル | 調剤業務、服薬指導 |
| NEXT DELIVERY | 機体提供、運航 |
