大分県と宇佐市、エアロネクスト、NEXT DELIVERY、セイノーホールディングス(以下、セイノーHD)、KDDIスマートドローン、電通九州は、2024年2月2日、同市において地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けた「道の駅を活用したドローン配送」の実証実験をレベル3.5飛行下で実施した。

 大分県「令和5(2023)年度ドローン物流地域実装モデル創出事業委託業務」の採択事業であり、セイノーHDとエアロネクストが推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流SkyHubの社会実装の検討に向けて、NEXT DELIVERYとKDDIスマートドローンが連携して行った。

 レベル3.5飛行とは、デジタル技術を活用(機上のカメラによる歩行者等の有無の確認)することで、補助者や看板の配置といった立入管理措置を無くし、無人航空機の操縦ライセンスの保有および保険への加入により、道路や鉄道等の横断を伴う飛行を容易にするもの。ドローン配送の事業化に向けて、ドローンの運用コスト削減や業務の効率化につなげるため2023年12月に新設された。

(左から)セイノーHD 事業推進部ラストワンマイル推進チーム新スマート物流推進プロジェクト課長 和田悟氏、大分県商工観光労働部理事 高野信一氏、宇佐市長 是永修治氏、エアロネクスト代表取締役CEO/NEXT DELIVERY代表取締役 田路圭輔氏、電通九州 地域価値共創局局次⾧ 大庭郁夫氏

 エアロネクストとNEXT DELIVERYは、能登半島地震で被災した輪島市から要請を受けた日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の活動に参加し、同市内において孤立地域にドローンによる医療物資などの輸送を実施。今回の実証実験においても、被災地で活用した物流専用ドローン「AirTruck」を使用し、災害時の物資輸送を想定したドローン配送に関する課題解決を想定した実証実験と、買い物不便地域に対する買い物代行を想定したドローン配送を実施した。

救援物資の入った箱を切り離して帰還するドローン(余温泉)
ドローンが配送した支援物資を確認する住民(余温泉)

実証実験について

 大分県の北部に位置する宇佐市。郊外の中山間部に位置する院内エリアでは、市街地から陸路によるアクセスが可能であるが、近隣の商業施設(スーパーチェーン含む)は1~2店舗点在するのみで、住民の多くは宇佐市街地まで車で買い物に行っている。今後、高齢化に伴う買い物難民や物流業界の2024年問題などによるドライバー不足、有事の際に孤立集落の発生が懸念されるなど多くの課題を持つ。宇佐エリアでは、新たな道の駅の建設に向け、DX技術導入による市民生活の利便性向上や緊急時対応も含めたドローン活用を模索している。

 そこで、買い物難民問題や有事の際などの孤立問題の解決策の検討、定期飛行に向けた課題の洗い出し、道の駅を拠点としたドローン活用の有効性などを検証するほか、地域住民の理解度向上に資するため、実証実験を実施する。

 実証実験では、買い物に関する課題と災害時の物資輸送を想定。2月2日の報道関係者への公開では、東院内地区公民館から両川地区公民館までの片道約7km(約15分)を、食料品を搭載してドローン配送した。また、東院内地区公民館から余温泉までの片道約6km(約14分)を、レベル3.5飛行で救援物資をドローン配送した。

 使用機体はエアロネクストとACSLが共同開発した物流専用ドローンAirTruck。機体制御には、モバイル通信を用いて機体の遠隔制御・自律飛行を行う「スマートドローンツールズ」(KDDIスマートドローン)の運航管理システムを活用した。

ドローン配送で余温泉に届けた救援物資

 レベル3.5飛行により、補助員5名を削減し、看板の設置や撤去作業も不要となった。飛行ルート上の電波は途切れることなく、機体カメラによる歩行者等の視認も問題がなかったことから、実装を見据えた運航が可能であることを確認。有事の際に活用できる飛行ルートを開通できた。