2023年6月26日、エバーブルーテクノロジーズ(以下、エバーブルー)は、無人自動除雪ドローン「除雪ロボ(プロトタイプ)」の開発・実証実験を開始したことを発表した。

 住宅地の自宅駐車場と玄関までの敷地内通路や大型除雪機が入れない商業施設、公共施設の敷地、駐車場、歩行者用通路での利用を想定しており、除雪ドローンを夜間を含めて常に稼働させることで、いつでも除雪されている状態を維持し、積雪や凍結を防止することを目指す。

everblue 除雪ロボ(プロトタイプイメージモデル)

 雪国における冬の雪かきは、幹線道路などの公共エリアは国や市区町村が除雪を行うが、自宅や会社などの私有地敷地内は、各所有者が小型除雪機やシャベルを使って人力で行う必要がある。体力を使う負担の大きい作業であり、高齢化が進むなか深刻な課題となっている。

 エバーブルーはこれまで、帆船型ドローンや高機動型水上ドローンといった水上でのドローン開発に取り組んできた。同社の水上ドローンを動かすコア技術となる自動操船ユニット「eb-NAVIGATOR」(※1)および連携するオリジナルスマートフォンアプリ「eb-CONNECT」(※2)はユニット構成のため、機体・船体形状に依存せず汎用性が高く、さまざまな用途での展開が容易であることから、技術開発の過程において陸上でのドローン(ローバー)の実験も行っていたという。

 小型除雪機のドローン化(自動化)について相談を受けたことをきっかけに、商品化の可能性を模索し、商品化に先立ち、商品仕様の策定などを目的にPoC(Proof of Concept)開発および、北海道滝川市の協力会社敷地内において、無人化した除雪機による自動除雪の実証実験を実施した。

※1 自動操船ユニットeb-NAVIGATOR:遠隔から自動操船するコントローラーと通信部分をユニット化した製品。既存のボートやヨットなどの舟艇を無人・自動化することができる。

※2 オリジナルスマートフォンアプリeb-CONNECT:クラウドサーバーと連携し、一般的な携帯電話回線(4G/LTE/3G)のサービスエリアにユーザーと水上ドローンがあれば、どこからでもリアルタイムで状況を把握できるテレメトリーが可能。プログラムによる自動帆走、遠隔操船も可能。

自動化した市販小型除雪機

実証実験 概要

 実証実験は、2023年2月下旬の2日間、北海道滝川市協力会社事業所敷地内(私有地)において実施した。

 まず最初のアプローチとして、既存の小型除雪機を遠隔操作ができるように改造し、自動操船ユニットを接続、搭載することで自動操縦化。オリジナルスマートフォンアプリにより自車位置のテレメトリー、経由地と目的地を設定して自動操縦が行えることを確認した。

 庭先や駐車場などでの使用が想定されるため、細かな位置精度が重要となることから、RTK GNSS基地局を利用してセンチメーター単位の誤差に収まるよう調整した。

【実証実験結果 確認事項】
雪上での自動直進、右旋回、左旋回など機動性を確認
センチメーター単位での位置精度、安定性を確認
除雪性能が人力で操作する場合と同等であること(実用的であること)を確認
スマートフォンアプリeb-CONNECTによる遠隔からのテレメトリー、ルート設定、自動運転ができることを確認
マニュアル操作の切替ができることを確認
自動運転終了後、自動的に停止することを確認

【無人自動運転時の速度】
最高速度 0.37m/s(1.3km/h)
平均速度 0.08m/s(0.3km/h)

無人自動運転時の軌跡(地図:Google Earth)

 今回自動化テストに使用した市販小型除雪機は、人が操作するために最適化された形状・操作インターフェースとなっており、遠隔化、自動化することに対して最適な形状、機能ではないことを改めて確認した。

 従来の人力による除雪の方法と、除雪ドローンを利用した場合の最適な除雪方法は必ずしも一致しないという結果を得て、除雪ドローンを開発するにあたり、最適な形状、運用方法を考慮した仕様を検討する必要性があるという。

 同社は今後、最適化した除雪ドローンの商品プロトタイプを製作し、2023年冬頃を目途に商品化するとしている。

実証実験の様子