2023年4月24日、FLIGHTSは、ドローンを活用して橋梁を点検する「FLIGHTS橋梁点検システム」の正式提供を開始したことを発表した。2022年4月より受託業務として80橋脚の実績を積み、今回点検システムとして確立した。同システムにより、効率的で高精度なドローンによる橋梁点検を従来よりも安価に実施できるという。

FLIGHTS橋梁点検システム

 FLIGHTS橋梁点検システムは、コンクリート製の橋脚を対象にドローンによる橋梁点検を近接目視と同程度の精度で実現する。

 点検作業は飛行撮影、精度管理、画像処理、損傷検出、成果品作成という流れで実施。これらの工程において、非GPS環境下でも所定の撮影距離を保ち、撮影角度を正対に維持した状態で自動飛行撮影ができる「FLIGHTS CONTROL(フライトコントロール)」や、画像の撮影条件が近接目視と同等の精度が得られるかどうかの判定を行う「精度管理アプリ」、画像データから生成されるオルソモザイクの作成、オルソモザイク画像からAIによって自動で橋脚のコンクリート面のひび割れ等を検出する「高精度AIひび割れ検出」により、ドローン点検に必要な工程をワンストップで支援する。

インフラの老朽化問題

 インフラの多くが高度経済成長期以降に建設され、建設から50年以上経過する施設の割合は、今後加速度的に増加すると言われている。実際に、国土交通省が2020年度に算出した「建築後50年以上経過する社会資本の割合」によると、全国に約73万ある道路橋は、建設後50年を経過する施設の割合が2020年3月時点では約30%に対し、2040年3月には75%まで急増するという試算も発表されている。

国土交通省令和2年度「資本社会の老朽化の現状」(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/_pdf/roukyuukanogenjou.pdf

 これらのインフラが老朽化することにより、人命に関わる事故やライフラインの寸断事故といった深刻な事態が発生する可能性があるため、定期的な点検業務が欠かせない。しかし人口減少に伴う点検員の不足や維持にかかる予算の確保、膨大な作業工数が問題となっている。

 こうした課題に対し、2019年には定期点検要領が改定され、人の近接目視と同等の診断が可能であることを条件としてドローンなどの新技術を用いることが可能となった。

従来のドローンによる点検における課題

 ドローンによる点検が注目を集める一方、従来技術と同様に使われるまでには至っていない。それは、ドローンなど画像で点検する技術の場合は、以下のような工程が必要になるが、これらを人手で行うと作業者の技量によって作業の精度にムラが発生し、作業工数が膨大になって現実的ではなかったからだという。

飛行撮影 :撮影距離・角度を一定に保つつ点検漏れがないように撮影する必要があるが、手動でこうした飛行撮影を行うのは非常に難易度が高く、操縦者の技量が必要になる。

精度管理 :取得した数百枚以上の画像の中から、点検に利用できる画像であるかどうかを1枚ずつ確認して報告する必要があり、膨大な時間と工数がかかる。(点検要領より提出が求められている)

画像処理 :取得した画像のうち、レンズの歪みの影響により画像内の周辺部分がピンボケするため、1枚ごとにピンボケ箇所を取り除く必要がある。

損傷検出 :取得した数百枚以上の画像から、約数百ある損傷を点検漏れがないように正しく検出する必要があり膨大な時間と工数がかかる。

FLIGHTS橋梁点検システムによる解決策

 こうした課題を解決するには、各工程を自動化したシステムが必要となるが、ゼロからシステムを構築しようとすると膨大な費用がかかる。そこで同社は、建設コンサルタントでの橋梁分野においてドローン点検の知見を持つ大日本コンサルタントと共同で、社会実装に資するドローン点検システムの開発を行うに至った。

 同システムは、自動飛行撮影アプリと精度管理アプリの開発、市販機への実装により、各工程の自動化と安価な価格での提供を実現する。

飛行撮影 :非GPS環境下においても点検に必要な飛行撮影を自動で行うアプリを開発。これによりパイロットの腕に左右されず、撮影距離・角度を一定に保ちつつ画像合成で必要になるラップ撮影を効率よく行うことができる。

精度管理 :飛行撮影直後に取得した画像精度の確認を自動で行い、精度管理結果を作成するアプリを開発。1枚ごとに写真を精査する手間や確認漏れを防ぐ。

画像処理 :画像から3Dのモデルを作成する技術(SfM)を活用し取得した画像のうち、レンズの歪みの影響が少ない画像中心部分のみを自動で合成する。

損傷検出 :取得する画像の品質に合わせて、AI損傷検出を最適化する。汎用アプリとは異なり、技術者による確認、修正作業を最小限に抑える。

経済性 :市販の機体を利用することで安価で利用しやすいシステムとなった。飛行撮影アプリと精度管理アプリにより現場での作業効率が向上し、2名での運用が可能。AI損傷検出を最適化したことにより損傷図作成の技術者の関与を削減。こうしたことから、従来技術であるロープ高所作業やBT-400(高架道路・橋梁点検車)あるいはゴンドラ車の利用と比べて、同等以上の経済性を発揮する。