2023年4月17日、北秋田市と大日本印刷(以下DNP)、DNPプランニングネットワークは、リアルとバーチャルを融合したXR(Extended Reality)で世界文化遺産「伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡」を体験できる鑑賞システムを、2023年4月18日に公開すると発表した。

 伊勢堂岱遺跡のXR化を起点に年間を通して伊勢堂岱遺跡辺の魅力を国内外に発信し、北秋田市への来訪を促して地域活性化を目指すとしている。

 鑑賞システムは、同遺跡に隣接する「伊勢堂岱縄文館」および同遺跡の公式ホームページで公開する。

 北秋田市の史跡である伊勢堂岱遺跡は、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の17カ所ある遺跡の1つとして、2021年に世界文化遺産に登録された。4つの環状列石(ストーンサークル)が完全な形で残っているほか、多数の土偶や祭祀の道具などが出土している。

 一方、北秋田市は国内有数の豪雪地帯であり、環状列石を積雪から守るために冬季は遺跡を公開していない。また昨今は、現地でのリアルな体験にバーチャルな体験を融合した“ハイブリッドな体験価値”の提供が求められていたという。

 こうした課題に対して同市とDNPグループは、オンラインで伊勢堂岱遺跡を体験できる鑑賞システムを“新しい文化体験”として提供する。この取り組みは、北秋田市が2022年度から推進している「伊勢堂岱遺跡のXR化事業」の一環として、国の「デジタル田園都市国家構想推進交付金(Type1)」の交付対象事業に採択されており、文化遺産を適切な状態で維持しながら鑑賞や学術的な活用のための公開を両立させるとしている。

 今後、この取り組みを起点として、北秋田市とDNPグループは、北秋田市の世界文化遺産を地域資源の魅力として磨き上げ、地域住民の「学び」「体験」「シビックプライドの醸成」につなげていくとしている。

 また、文化・観光資源として国内外へ情報発信することで、他の地域への「認知拡大」「関係人口の増加」「来訪者(交流人口)増加」に取り組み、地域のさらなる活性化を目指すほか、北海道・北東北の縄文遺跡群の他の遺跡との連携も進めていく方針だ。

XRを活用した“新しい文化体験”の特長

・3D鑑賞システム「みどころビューア」 ※伊勢堂岱縄文館でのみ公開

 出土品の質感や細かい文様を高精細デジタルアーカイブ技術で再現。利用者自身がビューアを操作して、さまざまな角度で出土品を細部まで鑑賞することができる。

3D鑑賞システム「みどころビューア」

・2D鑑賞システム「みどころキューブ」

 画面上のキューブ型のインタフェースを操作して、多くの出土品が発見された場所・深さを見ることができる。出土品同士の位置的なつながりや積み重ねられた歴史を視覚的に表す。画面上で出土品を選択することで、詳しい解説を閲覧可能。

2D鑑賞システム「みどころキューブ」

・360°VR鑑賞システム「バーチャル散策」

 スマートフォンやPCで操作して、遺跡巡りを体験する。実際の遺跡では景観に配慮して説明看板は設置していないが、同システムの画面上には各種情報が表示され、遺跡の特徴を深く理解できる。ドローンで撮影した映像で、遺跡の規模や4つの環状列石が並ぶ珍しい様子も一望可能。

360°VR鑑賞システム「バーチャル散策」

関連する施策

・子どもも大人も楽しめる土偶のペーパークラフト

 あらゆる年代の人々が気軽に楽しみながら文化財である土偶の魅力に触れることができるペーパークラフト。伊勢堂岱縄文館のミュージアムショップで販売するほか、同館での体験型プログラムとして活用する。また、学校の郷土授業や生涯学習などでの利用も提案していく。

・首都圏の主要駅のデジタルサイネージで動画広告を配信

 2023年2月、東京駅をはじめとしたJR東日本の18駅・24エリアにある268面のデジタルサイネージで伊勢堂岱遺跡のXRコンテンツの動画を配信するなど、首都圏の人々に北秋田市の魅力を伝えるプロモーションを実施。

・インフルエンサーを起用したプロモーション

 “土偶女子”として知られるライター譽田亜紀子(こんだ あきこ)氏による、縄文時代の魅力を語るコラム「土偶女子が行く-めくるめく縄文ワールド-」を6回にわたり発信。縄文時代の土偶や土器、生活様式などについて専門的な知識がなくとも気軽に楽しむことができる。