2022年6月22日、エアロセンスとナイルワークスは、エアロセンスの広域対応ドローン「エアロボウイング(AS-VT01)」を活用したデータ駆動型農業の実現に向けて、戦略的業務提携を締結したことを発表した。

 日本の農業は、就農者の高齢化や担い手不足が進み、病害虫や雑草の防除などによる負担が課題となっている。そのため、各地の農業生産法人やJA(農業協同組合)、農業・食品関連の企業、自治体でも先端技術を活用した取り組みが進められている。

 そこで両社は、エアロセンスによる広域農場に適した長距離飛行可能なドローンと植生分析も可能なマルチスペクトルカメラによる撮像技術、ナイルワークスが保有する作物の近接撮影と画像認識技術を組み合わせ、先端農業技術の向上を進める計画だ。データ駆動型の新しい農業により、人手不足解消や生産性向上を図り、持続可能な農業を目指すとしている。

エアロセンスの「エアロボウイング」

 エアロボウイングは、エアロセンスで開発・設計・製造・販売を一貫して行っている垂直離陸型固定翼ドローン(VTOL)である。航続距離50kmの長距離飛行ができるため、一度で広範囲にわたる撮影が可能。広い農場での撮影を実現する。

 LTE通信機能を搭載しており、ドローン操作端末と機体の距離が離れても、通信基地局を介して安定した飛行制御や映像伝送が可能。また、垂直離陸型のため滑走路は不要で、狭い場所からも離着陸できる。

 撮影にはマルチスペクトルカメラ(MicaSense ALTUM)を使用し、作物状態の分布を取得することができる。

ナイルワークスの「農業用ドローン」

 ナイルワークスは、作物の上空30~50cmを自動飛行する「農業用ドローン」を2018年に上市し、全国延べ10,000ha以上の防除を行ってきた。専用カメラにより作物の近接画像を取得することで、次世代の営農支援システムの開発を行っている。

 両社は、それぞれの特長を活かし、農業におけるセンシングデータ利活用のソリューション開発を進めるとしている。ナイルワークスで保有する水稲10,000haの高解像度・近接画像と、エアロボウイングで取得する中解像度・広域・スペクトル分布画像を突合させ、ナイルワークスが独自開発している画像認識技術により作物状態を解析する。その際、ナイルワークスの農地データプラットフォーム「NileBank」にデータを集約し、自動農機との連携や営農判断に利活用する。

農業におけるセンシングデータ利活用のソリューション開発イメージ

 両社は今回の業務提携に向けた基礎的な取り組みとして、2021年8月、北海道においてエアロボウイングを飛行させ、水稲圃場300ha程度のセンシングを30分程度で行い、高度100~150mから中解像度・広域画像を取得した。また、同年10月には牧草地のセンシング・解析を行い、水稲以外の作物における実証実験も実施している。エアロセンスの画像解析クラウドソフト「エアロボクラウド」と連携し、ナイルワークスで解析している。今後両社は、協業分野を順次拡大していくとしている。

 両社は今回の提携により、エアロボウイングを活用した農業サービスの実用化に向け、さまざまな農業分野で実証実験と技術開発を重ねていく計画である。農業分野に適したエアロボウイングの機能開発・改良や、ナイルワークスが開発している画像認識の技術向上を図り、データを活用した新しい農業サービスの実現を加速させるとしている。

水稲の作況、倒伏などの識別
牧草地における難防除雑草を抽出・解析
エアロセンスとナイルワークスの提携に際する両代表と両社のドローン(左)、2021年の実証実験の様子(右)
空からの農場センシング エアロセンス×ナイルワークス