2022年4月27日、ファンリードとエアロセンスは、アジア・太平洋電気通信共同体の加盟国研究機関と日本企業で推進される「国際共同研究プログラム2021」へ、「ドローンによる高分解能画像を用いたサラワク州のマングローブ分布/生育マップ作成技術の実証実験」をマレーシアのサンウェイ大学と共同提案し、採択されたことを発表した。

 同実証では、サラワク州ラジャン・マングローブ国立公園で、マングローブ保全に向けた政府政策決定に資する科学的データ収集し、可視化することを目的に、マングローブ分布/生育マップを作製する。サンウェイ大学がプロジェクト責任者となり、エアロセンスがドローンによるデータ取集・解析、ファンリードがデータ分析を行う。

 具体的には、エアロセンスはマルチコプター型ドローン「エアロボ(Aerobo)」を用いて空から高分解能な画像データを収集し、ドローン観測のデータ処理に特化した「エアロボクラウド(Aerobo Cloud)」を活用してデータ解析を行う。地上からは、GPSを含むGNSS衛星電波受信機内蔵の対空標識「エアロボマーカー(Aerobo Marker)を用いて位置座標データを収集する。
 ファンリードは、エアロセンスが収集・処理したデータを分析し、画像認識などのAI技術を活用してマングローブの分布・生育マップを作製する。

 マレーシアでは、2004年スマトラ沖大地震の際、半島部海岸のマングローブ林が保全されていた地域で津波被害が軽減されたことから、2005年以降、全州政府とNRE(Ministry of Natural Resources & Environment)によるマングローブ保全への積極的な取り組みが行われている。
 同国に62.9万haあるマングローブの22%(約14万ha)※1を有するサラワク州では、「海の命のゆりかご」ともいわれるマングローブが形成する生態系を維持することが、地域の持続可能な漁業を実現するうえで喫緊の課題となっている。また近年、マングローブはアマモなどの海草類とともに “ブルーカーボン生態系” として気候変動対応の観点からも保全の必要性が高まっている。

 今回の実証実験は、特定の対象地域における技術実証(Category I)となる。この成果を踏まえ両社は、サンウェイ大学とともに、本格的な事業化実証(Category II)への移行を目指すとしている。Category IIのフェーズでは、エアロセンスの広域対応ドローン「エアロボウイング」により観測エリアを広げ、ファンリードのハイパースペクトルセンサー搭載により分析能力を向上させる。

 両社は、政府機関や地域コミュニティー等に対してマングローブの保全および生態系の維持に必要なデータ提供を続けることで、サラワク州におけるビジネス展開を目指すとしている。

※1 “Status of MANGROVES in Malaysia”(Publisher:FOREST RESEARCH INSTITUTE MALAYSIA, 2020)