2022年6月16日、エアロセンスは、塩屋土地と共同で、住宅密集地(人口集中地区:DID地区)における飲食物のドローン配送サービス実証実験を行ったことを発表した。

 これまでのドローン配送実証実験は、主に過疎地や離島の買い物弱者対策であり、ビジネスにするための採算性は度外視されていた。そこで両社は、兵庫県、新産業創造研究機構(NIRO)の「令和3年度ドローン先行的利活用事業」の採択事業として、DID地区でのドローン配送について具体的な採算性と利用ニーズを検証するため同実証を実施した。有人地帯における目視外飛行(レベル4)運用を見据えたものとなる。

 実証実験は、2021年9月と2022年1月の2度にわたり実施。レストランから配達先となる戸建て住宅まで、テイクアウトメニューをドローンで配送した。

 第1回目の実証実験では家の近傍まで、第2回目は家の庭へと配送を行い、将来の個宅配送を想定できる実験とした。2度の実験で延べ50フライトを行い、デリバリー時間の確認や利用者に向けたアンケートを実施して採算性と利用者ニーズを確認した。

 レストランから戸建住宅への飲食物配送をターゲットとすることにより、将来社会実装が見込まれる住宅街でのドローン配送における費用対効果を検証。その結果、レストランの開始時刻11時から14時のランチタイムに5回程度のデリバリー実施、および家賃に加算するサブスクリプションモデルを想定したドローン配送サービスの提供は十分に可能であることが分かった。また、今回実証に参加した住民からは、継続的にレストランからの飲食物配送を希望するというニーズを確認した。

 また、配送対象となる飲食物とドローンに荷物を収納するためのペイロードBOXのサイズがマッチしない場合があり、輸送コストを増加させる原因になることが分かった。
 2回目の実証実験の際は、KADO開発の新型ペイロードBOXの提供を受け、飲み物2つと食べ物(2名分のランチメニューを想定)を1度に配送し、容積の問題を解決した。

実証実験で配送した飲食物
飲食物例

 従来の2.4GHz帯の通信は、運航距離が短い場合でも、離着陸場所をさえぎる樹木や塀などにより不安定な状況になりやすい。今回は住宅街におけるLTE通信網を利用することで、安定した通信を実現した。遠距離での利用にのみ効果的と考えられていたLTE通信でのドローン運用が、短い飛行距離であっても離着陸場所の環境によっては十分意味のあることが示された。

エアロセンスのLTE搭載ドローン「AS-MC03-LTE」
【塩屋土地・エアロセンス】令和3年度ドローン先行的利活用事業(NIRO YouTubeチャンネル)