アイザワグループで無人航空機開発を行うアラセ・アイザワ・アエロスパシアル(以下AAA)は、500㏄エンジン搭載の産業用大型ドローン「AZ-500」を開発し、2021年10月26日、浜松市内の天竜川河口でデビューフライトを実施した。
当日は、ピッチ(前後)方向確認、ロール(左右)方向確認を実施した後、バーチカルボックス(四角)、ホリゾンタルエイト(8の字飛行)など予め決められた姿勢制御のチェック項目をクリア。最後に回転数を上げた昇降テストなども追加し、無事にデビューフライトを終えた。
AZ-500は、建設、物流、防災、防衛など、さまざまな産業用途に使えるベースマシンを目指し、高性能二輪エンジン技術を応用してドローンの専用エンジンを新規に設計するところから開発を開始した。
ドローンの動力源をエンジンに求める場合、高出力とともに軽量化と無振動化が課題となる。AZ-500のエンジン型式は油冷式500㏄。ジャイロ効果キャンセル構造を独自設計し、エンジン本体を無振動化した。これによりエンジン本体から4本のローターシャフトを腕のように伸ばし、エンジンのパワーをロスすることなく直駆動でプロペラに伝えるクアッド型マルチコプターを機体形式として採用。姿勢制御はプロペラの角度を調整して行う可変ピッチ方式とした。
機体重量は100㎏、ペイロードは50㎏未満。ペイロードを使用しない連続航行時間は5時間以上となる。
機体の格納庫と自律運航システムを一体的に開発
同社ではAZ-500の機体開発とともに、その格納庫となる「The Port」を一体設計し、その実現を目指している。AZ-500はそこから離発着を行い、機体が格納されたThe Portは車でけん引して建設現場などに運び込むことができる。自動給油機能や機体の自動点検機能も備える。
また大型のエンジンドローンが安全に飛びながら人と協働するためには、機体が人や危険物を避けながら飛行できる完全自律型の航行システムが必要になる。AAAではブロックチェーン「SYNCWORLD」を利用したデジタルツインの生成同期システムの開発を進めている。リアルな世界と同期し続けるデジタルツインを座標軸として、ゲーム開発による技術をベースに機体が自律運航する新たなドローンオペレーションを構築する。
同社は、空飛ぶロボットのベースマシンとなる「AZ-500」、機体の格納庫となる「The Port」、自律航行システム「SyncWorld Engine」の3つの技術要素が一体となった統合システムを「The Drone Basics for Industries」(産業用ドローンの基本構成)として具体化し、普及を進めていくとしている。
なお、10月27日から3日間の日程で開催される「第4回名古屋ロボデックス」に、AZ-500やプロトタイピングを進めている格納庫などを出展する。