2021年10月5日、長野県伊那市は、2021年度より中央アルプス・南アルプスにおいて、大ペイロードの無人VTOL機を使った「物資輸送プラットフォーム構築プロジェクト」を開始したことを発表した。
 同プロジェクトの事業化に向けて、川崎重工業(以下、川崎重工)が伊那市からの委託を受け参画。事業の取りまとめや機体の開発を行う。

 また、伊那市と共に2020年8月からドローン物流による買い物支援サービス「ゆうあいマーケット」を構築したKDDIと、河川上空をドローン航路とする「INA アクア・スカイウェイ事業」に取り組むゼンリンも同プロジェクトに協力する。KDDIは通信、運行管理システム開発支援を、ゼンリンは飛行ルート構築支援(地図関連)を行う。

事業体制

 近年のアウトドアブームを背景に山小屋の利用人口は増加しており、安定的な物資輸送が求められている。山小屋への物資輸送は現在ヘリコプターに頼っているが、送電線工事や公共事業の増加、パイロット不足等により機体の確保が難しくなっており、全国で多くの山小屋が影響を受けている。

 このプロジェクトでは、山岳特有の気象状況に適応し、長い距離と大きな標高差を安定して飛行できる、川崎重工が開発中の無人VTOL(垂直離着陸)機「K-RACER」を活用。山荘への物資輸送のための固定空路を構築し、各種ステークホルダーとの調整や法令に基づく許認可等の手続きを行い、将来にわたって持続可能で効率的な輸送スキームを構築する。
 同スキームは、汎用性・拡張性を持たせることで全国への水平展開が可能であり、同様の課題を抱える自治体や関係団体の課題を解決し、山岳部物資輸送事業の安定運営の基盤確立に寄与するとしている。

 川崎重工が開発中の大ペイロードの無人VTOL機「K-RACER(Kawasaki Remote, Autonomous and Cargo-ability Enhanced Rotorcraft)」は、レシプロエンジンを搭載。ペイロード100kg以上、継続航行距離100km以上、上昇能力は2,000m(標高耐性3,100m)と、ヘリコプターによる荷揚げ業務を代替しうるスペックを備えている。無人地帯での目視外自動飛行(レベル3)に対応する。