ブルーイノベーションは、飛行経路の放射線の検知・計測、漏洩位置の特定ができる屋内点検用球体ドローン「ELIOS 2 RAD」の販売を、2021年10月26日に開始した。

 原子力発電所の施設内点検に特化したELIOS 2 RADは、工場・プラントなど非GNSS環境下の屋内点検に適した球体ドローン「ELIOS 2」をベースに開発された。放射線センサーにより放射線の検知・計測ができるほか、飛行経路を3D点群マップで可視化することで放射線の漏洩箇所を正確に把握できる。ドローンによる撮影動画や画像により現場の状態をリアルタイムに把握することも可能だ。

ELIOS 2 RADの外観(左)、放射線センサー(右)

 原子力発電所では、施設の通常点検時や、緊急時の放射線漏洩の確認、漏洩が疑われる際に、その位置を把握して線量を正確に計測する必要がある。従来は点検員が現場に立ち入り計測するため、被ばくが避けられず安全性に課題があった。
 また、事故などの緊急時には施設内に入れないため、自走式ロボットによる放射線の検知・計測が試みられるが、自走式ロボットでは縦方向の移動ができず、施設内部が瓦解している場合は移動が制限され、点検できる範囲に限界がある。

 ELIOS 2 RADは、管理区域外や保全区域外などから操作を行い、極小空間を含めた施設の空間を移動して放射線を検知・計測することができる。放射線の漏洩位置と線量を正確に把握することで、速やかな補修計画の策定・実行が可能になり、点検員の負担軽減と安全確保にも寄与する。

 ブルーイノベーションは、今回のELIOS 2 RADのリリースにより、原子力施設の点検プロセス効率化、緊急時点検に即応する点検体制の構築、点検員の安全確保、データ利活用による予兆保全やDX化の推進に貢献するとしている。

専用アプリ「Inspector 3.0」による放射線データの位置特定とマッピング
飛行中の線量と空間線量示度、累積線量などをリアルタイムに表示

ブルーイノベーション 代表取締役社長 熊田貴之氏のコメント

 ELIOS 2 RADの開発元であるFlyability社は、2011年3月11日に福島で起きた原子力発電所の事故をきっかけに設立されました。当時、限られた手段で何とか状況を収拾しようと懸命に努力している方々を目の当たりにし、瓦解した施設内部を点検するためには、もっと安全で、もっと効果的な方法が必要だとの想いから開発されたのがELIOSシリーズです。

 そして、今回のELIOS 2 RADにより、その想いが現実のものとなりました。ELIOS 2 RADにより原子力発電所に携わっていらっしゃる方々の安全が確保され、緊急時に即応した点検フローの確立に貢献したいと考えています。

チェルノブイリ原発事故の現場で実施されたELIOS 2の飛行テスト(2020年撮影)/Flyability