ブルーイノベーションは”さまざまなデバイスを使い、1つのコマンドで多様なミッションを達成する”をコンセプトにした「クロスデバイス」をキーワードにかかげ、これを目指したブルーアースプラットフォーム(BEP)に接続する5つのソリューションを発表した。BEPのソリューションは業務目的別にパッケージ化され、センサーとドローンを組み合わせることで業務課題の解決を図る。

最先端のモジュールとドローンで点検、物流、屋内管理の自動化を実現

 BEPは複数のドローンやロボット、各種デバイスを連携させ、遠隔地から自動制御するデバイス統合プラットフォームだ。

 ブルーイノベーションは、なかでも自己位置推定モジュールの開発が得意であり、これまでにもオフィス内の巡回警備用ドローンや、屋内点検用ドローンを発表してきた。今後は国や自治体が進めているスーパーシティ構想の都市OSとして、これらBEPに接続するソリューションを導入していきたい考えだ。

送電線点検用ドローン自動飛行システム

デモ機はDJI Matrice 210にセンサーモジュールを搭載し、Zenmuse Z30を装着していた。

 自動飛行による送電線点検は、たわんで弧を描いた送電線への追従が課題とされてきた。ブルーイノベーションは独自のアルゴリズムを投入したセンサーモジュールを開発し、送電線にぴたっと追従する飛行を実現した。

 飛行は、センサーモジュール内のレーダーを送電線に照射して追従する。自動飛行はレーダーが送電線を捉えると、自動で送電線を検知。それをアプリ上で選択するだけで7mの間隔を取りながら飛行を開始する。刻々と変化する送電線のカーブをセンサーモジュールで計算し、交差する送電線なども間違わずに追うことが可能だという。

ELIOS 2専用解析ソフト「Inspector 3.0」

ブース内でELIOS 2の飛行デモを実施。壁面に貼られたスケールを読み取った。
点群(左図の白い点)による3Dマッピングを行い、飛行の軌跡や撮影方向を表示。高輝度LEDの搭載によって、鮮明に点検箇所が映し出された(右図)。

 ELIOS2は使い勝手の向上を図り、飛行中の位置特定が可能になった。撮影した写真表示に連動し、撮影位置と飛行軌跡をソフトウェア上で表示する。これは、ドローンに搭載されている既存のメインカメラ、赤外線カメラ、ジャイロによるもので、飛行しながらリアルタイムに3Dマッピングを生成する仕組みだ。赤外線カメラは2mの範囲を認識し、壁面に近い狭小空間などで高密度な点群データを取得できる。また、撮影データにはタグ付けコメントを入れることが可能で、画像、位置情報、コメントの3点をまとめて報告書にアウトプットする。

倉庫内在庫管理ソリューション

ACSL miniにRFIDモジュールを搭載。ビジュアルSLAMは一度施設内を飛行させ、そのデータをもとに3Dマッピングを生成する。

 ビジュアルSLAMを活用した倉庫内在庫管理ソリューションを展示。在庫管理に使用するRFIDリーダーの読み取りモジュールを搭載したドローンが、ビジュアルSLAMによって屋内で自動飛行を行う。RFIDリーダーから電波を照射することで、棚や商品に貼られたRFIDタグを読み取り、在庫情報を取得する仕組みだ。

 RFIDはバーコードやQRの一種で、モジュールの交換でさまざまなリーダーに対応することが可能だという。なお、奥の方に並べられた在庫はバーコードやQRでは読めないため、電波を使ったFRIDで管理を行う。そのほか、棚にバーコード等を貼り、棚の場所を特定して在庫管理するなど、さまざまな使い方があるという。

災害用物流ソリューション(ドローンポート)

ソリューションはドローン、避難所用タブレット端末、各拠点用PCで構成。京セラの「5Gコネクティングデバイス」を使えば、停電時にモバイル回線を確保できる。

 災害時に防災本部や避難所、物資輸送拠点と連携を行うための物流ソリューションを展示した。避難所に配備したタブレット端末から必要な物資を要求することで、各拠点から迅速に物資を届けることが可能になる。端末の電源を入れることで位置情報が各拠点のアプリケーションに送られ、端末の位置情報をもとにドローンの飛行ルートを自動生成するといったシステムだ。

 また、災害時の飛行は航空法の例外規定に該当し、すぐさま飛行させることが可能だが、後日、飛行申請を提出する必要がある。そこで、ブルーイノベーションの災害用物流ソリューションは、物資IDと飛行計画IDを選択するだけで航空局に飛行申請が届く仕組みを搭載した。

工場内自動点検ソリューション

ドローンの上部に5Gコネクティングデバイスを搭載した工場内自動点検ソリューション。

 ACSL miniに京セラの「5Gコネクティングデバイス」を搭載した点検ソリューションを展示。5Gコネクティングデバイスは、5Gに接続することが可能な端末で、データのやり取りを高速化する。これと同時に、Android OSを搭載しており、ブルーイノベーションではエッジAI解析アプリを使った工場内自動点検を打ち出した。

 最大のメリットは現場ですべてのデータ確認ができることだ。5Gコネクティングデバイスはアプリで取得した写真をエッジAIで解析し、その結果をディスプレイに表示できる。そして5Gを使ってクラウドにアップロードすれば、すべてのデータ管理が現場で済んでしまう。これを使えば、会社に帰ってからデータの不足が発覚したという事態を避けることが可能になる。

人材育成と両軸で広がる自動ソリューションの展開

業界の展望について語ってくれたブルーイノベーションの熊田貴之代表。

 ブルーイノベーションの熊田代表は今回の出展内容と産業について触れた。「ドローンがソリューションの一部を担うツールであることが認識され始めている。そして、いよいよドローンやAGV、ロボティクスなどを適切に使い分ける段階に入ってきた。各モジュールを適切なデバイスと組み合わせることで多様なソリューションとなる。ドローンの発展は進んでいるが、もうひとつの技術要素やキーワードが組み合わさると、市場が急拡大するのではないかとみている。また、とても優秀なドローンが数多く開発される一方で、人材育成の重要性が際立ってきた。いかに精度の高いドローンであっても、運用スキルを持ち合わせていなければ、有効活用が難しいことが明確になりつつある。DXといった自動化がひとつのキーワードとなる現代で、人材スキルの標準化が重要だととらえている」と、近年のドローンの動向について語った。