2021年3月23日、ブルーイノベーションは、独自開発したドローンポートとクラウドを連携させて、迅速な災害対策を支援する「災害用ドローンポートシステム」の実証実験を大分県日田市で行った。
ブルーイノベーションは、2016年から国土交通省や東京大学と共同で物流用ドローンポートの開発を進めていて、このドローンポートは画像認識により誤差数十センチの高精度着陸が可能なほか、ドローンポートへの人の立ち入りや強風により安全に着陸できない場合に、自動で離着陸を禁止させる機能を備えている。
今回の実証実験は、国土交通省が実施するドローン物流の研究委託事業(交通運輸技術開発推進制度)に採択されたもので、ドローンによる安全かつ迅速な災害時物流を実現する総合支援システムの開発を目的としたものだ。
昨今、陸上輸送が困難な状況での災害時物流としてドローンの活用が期待されているが、ドローンによる救援物資の輸送においては関係各所間が連携し、災害時でも安定したドローン輸送が行えるよう離着陸や飛行などの運航を自動化するシステムが求められている。
今回実証実験を行った「災害用ドローンポートシステム」はドローンポートとクラウドを連携させて、災害用に応用したものだ。被災地の詳細位置や必要な物資情報の把握、災害対策本部との情報共有、救援物資の調達に必要な申請・受理の手続き、輸送ドローンの自動運航(自動離着陸と飛行)などを一元管理でき、実証実験により迅速な災害対策を支援できることを確認した。
道路遮断などの影響を受けないドローン輸送が災害時に必要最小限の体制・人員で実施できるようになれば、救援物資輸送の迅速化と作業負担の軽減、ひいては地域住民への速やかな安全安心の提供が可能となる。ブルーイノベーションは、今後もこのシステムを活用した災害時支援システムの実証実験を重ね、2022年4月以降の実用化を目指していく考えだ。
実証実験の概要
想定
・ 大分県日田市で大規模豪雨が発生し、土砂崩れにより道路が寸断。
・ 住民がいる避難所へトラック等による救援物資輸送ができない。
・ コロナ禍での避難所運営に不可欠なマスクなどの感染対策グッズと、高齢者の体調管理のための遠隔診療端末をドローンで輸送する。
実証内容(以下のうち①~③を災害用ドローンポートシステムで実施)
①ドローンポートからの被災地情報の自動発信と共有
折り畳まれた状態の災害用ドローンポートシステムを被災地で広げて設置すると、付属のセンサーユニットが座標データを衛星経由でクラウドに送信する。これにより被災地の位置情報を瞬時に関係機関と共有する。
②救援物資の申請・受理と飛行前準備
①で共有されたデータから物資輸送場所(着陸地点)を把握し、クラウドを介して必要物資の要請や手配、飛行計画の策定や共有、ドローンの安全運航に関わる風速情報や着陸地点周辺の安全状況の把握など、ドローンの飛行準備段階で発生する一連のオペレーションを実施。
③ドローンによる物資輸送(運航の自動化)
物資輸送拠点から自動離陸したドローンの運航状況の取得・監視、異常発生時の緊急停止措置や人による操作介入、ドローンポートによる自動着陸誘導、着地点の安全を高精度に自動確認する侵入検知センサー、テザー機構による物資の吊り下げ、物質輸送拠点への自動帰投など、ドローンの自動飛行や自動離着陸、安全運航に関わる項目を検証。
④遠隔診療の実施
避難者の多くは高齢者であることを想定し、避難中の怪我や避難所滞在中の体調ケアに対応するため、ドローンで輸送した遠隔診療システムを用いて地元医院の医師による遠隔診療を実施。
協力自治体および企業の主な役割
団体・企業名 | 主な役割 |
---|---|
国土交通省 総合政策局 技術政策課 | 本事業委託元 |
大分県・日田市 | 実証地提供、地元・関係者調整 |
自律制御システム研究所 | ドローン機体提供 |
京セラ | 通信デバイスとエッジ処理の提供 |
二プロ | 輸送物(二プロハートライン)提供 |
NTTドコモ | LTEおよびLPWAの通信環境の提供 |
富士フィルムイメージングシステムズ | 災害用可搬式ドローンポート製造 |
ブルーイノベーション | 事業企画・運営、ドローンポートおよびドローン運航管理、クラウド運用管理 |