2021年5月11日、東京電力ホールディングスとブルーイノベーション、テプコシステムズは、送電線に沿ってドローンが自動飛行・撮影する「送電線点検用ドローン自動飛行システム」を開発したと発表した。また東京電力パワーグリッドは、同社が保有する送電線の点検業務に同システムを6月より導入する。
このシステムは、ブルーイノベーションが開発したBlue Earth Platformをベースに、3社が共同開発したものである。Blue Earth Platformは、複数のドローンやロボット、それらに搭載したセンサーやカメラを同時に制御・管理することで、複数のドローンやロボットに任意の業務を自動遂行させることができるプラットフォームだ。
同システムを導入する東京電力パワーグリッドが保有する地上の送電線は28,391kmあり、その点検作業は主に高倍率スコープやヘリコプターなどを用いて目視で行っていた。このシステムにより、一般的なドローンにも搭載可能な新開発の対象物検知センサーで送電線を検知し、ドローンが自動飛行しながら最適な画角で送電線の腐食、劣化といった異常等を撮影することで、点検作業の大幅な効率化とコスト低減を図る。
ドローンによる送電線点検の課題
・ドローンが送電線に近づくと電線から生じる磁界の影響により方角を正しく認識できなくなり、機体の制御が不安定になる （送電線とドローンの距離を常に一定に保ち、自動飛行する技術が必要）
・電流値・気温・風などの影響で電線の形状が変化するため、電線の形状をあらかじめ予測し、電線に沿った飛行ルートを事前設定することが難しい （飛行ルートをリアルタイムに自動設定・調整する技術が必要）
これらの課題を解決するため、送電線の位置を検知する対象物検知センサー技術、ドローンと送電線との距離を一定に保ち飛行する制御技術、送電線をブレなく撮影するための振動制御技術などを共同開発した。加えて、現場の作業員が使いやすいよう送電線撮影に特化したアプリケーションの開発を行った。
システムの特徴
1. 飛行環境の変化に左右されずに送電線に沿って飛行可能
システムに搭載されている対象物検知センサーは、画像解析による送電線の検知とは異なり逆光や影、類似する構造物の影響を受けず正しく送電線を検知できる。
鉄塔間距離365mの実証実験でも、画角を外さずに送電線と平行に飛行・撮影できることが実証されている。
2. ワンクリック操作
専用アプリケーション上のワンクリックで、ドローンの離発着および送電線撮影を自動で実施。
3. 撮影映像をその場で確認可能
自動飛行のため作業員はドローンを手動操縦する必要がなく、ドローンからリアルタイムに送られてくる送電線の映像確認に集中できる。気になる箇所は、その場でドローンを一時停止させ、カメラをズームして送電線の状況を詳細に確認することができる。
