2021年9月30日、経済産業省は、ドローンが安全で効率的な飛行をするために必要な、地図や気象などの地理空間情報に関する国際標準が9月29日に発行されたことを発表した。

 今回発行された「ISO 23629-7 UAS traffic management (UTM) ― Part 7: Data model for spatial data」は、ドローン運航管理システム(UTM:UAS Traffic Management)に実装する地理空間情報の構成と項目などのデータモデルを定義した国際標準だ。この地理空間情報に含まれるデータ種類や構成、関連する情報が体系的に整理され、以下のような4階層構造を持つデータモデルとして定義された。

1. 地形や土地利用、離着陸エリアなどを示す「地図情報」
2. ドローンの飛行にとっての障害物となる建物や鉄塔などの「障害物情報」
3. 飛行禁止エリアやドローンの空域を示す「仮想データ」
4. 気象情報や電波情報など時間的に変化する「動的データ」

地理空間情報データモデルの概念図(ゼンリン、日本気象協会 提供)

 この国際標準は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2017年より推進する「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」の成果によるもので、ISO/TC20/SC16(国際標準化機構(ISO)の「航空機および宇宙機」に関する技術委員会(TC20)における「無人航空機システム」の分科委員会(SC16))の会議体において日本が国際標準の開発を主導していたものである。

 経済産業省は、2022年度における「無人航空機の有人地帯での目視外飛行(レベル4)の実現」に向けて、ドローンに係る研究開発や環境整備を進めている。この取り組みのひとつであるドローン運航管理システム(UTM)の効率的な開発や活用の一層の促進には、ドローンの飛行の妨げになる障害物情報や気象情報といった地理空間情報が有用であることから、そのデータモデルの国際標準化について、かねてより日本から国際標準の提案を行っていた。

 この国際標準が普及することで、世界各国のドローン関係者が地理空間情報を活用する際の共通基盤が整い、世界中で進められているUTMの効率的な開発や、利用者の利便性の向上が期待される。

地理空間情報のサポート範囲の概念図(ゼンリン、日本気象協会 提供)

 経済産業省は引き続き、ドローンに関係する事業者や業界団体、関係省庁といったステークホルダーと連携し、物流・点検・測量等さまざまな分野におけるドローンの産業利用推進の支援を通じて、本国際標準の普及促進を進めていくとしている。

▼ISO 23629-7:2021 UAS traffic management (UTM) ― Part 7: Data model for spatial data
https://www.iso.org/standard/76973.html