2021年1月18日、ブルーイノベーション、慶應義塾、神奈川県は、神奈川県小田原市でドローンを活用した農作物自動運搬の実用化に向けた実証実験を実施したことを発表した。

 この実験は、環境省・国交省連携の「社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業」において実施される「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業(※1)」の一環として行われたものである。

 ブルーイノベーションは、ドローンを活用した農作物自動運搬の実証実験第一弾「空飛ぶかぼちゃ」を平地で行っている(※2)。今回の急傾斜地での実験は、みかん農園から集荷所周辺までドローンでの運搬(みかん20kg、直線距離約100m、標高差14m)を行った。今後も地形や搬送物、経路など異なる条件下での実験やコスト検討を積み重ね、地域ごとに最適化したドローンによる自動運搬プロセスの構築を目指す、としている。

※1 「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業」について
 環境省・国土交通省連携事業として、補助を受けて実施するもので、社会的な課題をドローンで解決し、輸配送の効率化によるCO2排出量の削減とともに、利便性の向上や地域内の活性化を目指すものである。
 小田原市内においては、県の代表的な農作物の一つであるみかん農園に対して地域が抱える課題を抽出し、解決策を様々な角度から検討していくものである。2023年度にはドローンによる安全な農作物の運搬を軸とするビジネスを成立させることを目的としている。

※2 ドローンを活用した農作物自動運搬の実証実験 第一弾「空飛ぶかぼちゃ」
 2020年11月12日、北海道当別町で、生産農家から町内の道の駅までの平地において、白カボチャや大根を運ぶ実証実験が行われた。20kgの荷物を運べる物流用ドローンを使用し、朝の出荷を想定して生産農家2か所をたどり農作物を道の駅まで運んだ。この実験により、住宅や道路がある平地での安全性確保、音量による影響、電波障害の有無に問題がないことが確認できた。参考:ブルーイノベーション「ドローンによる農作物運搬実用化に向けた実証実験を実施」(2020年11月12日)

ドローンによる自動運搬への期待

 現在、農業は人手不足により一人当たりの作業面積が増え、担い手の負担が増加している。その担い手も高齢化しているため従来の農作業が困難となっており、収穫物運搬時の高齢者運転の危険性も指摘されている。ドローンを活用し農作業のプロセスを改善することで、作業効率化や高齢従事者の負担軽減、人手不足でも対応できる仕組みの構築が期待できる。
 実験を行った小田原市では、運搬車の立ち入りが困難な急傾斜地で多くのみかんが栽培されている。そのため、収穫時は何往復も人力で運ばなければならず、少人数かつ高齢の農業従事者に大きな負担となり、生産効率化への障害となっている。
 本実験では、安全性と採算性の他、ドローン機体性能・運用面・環境面の評価・検証が行われた。これにより、急傾斜でのドローンによる農作物運搬の有効性と、実用化に向けた新たな課題が確認された。

実証実験の概要

日時 :2021年1月15日(金)10:00〜12:00
場所 :矢郷農園 神奈川県小田原市石橋322

実験内容:農園(傾斜地)から集荷所まで農作物(みかん)の運搬
①集荷所付近にあるドローンを農園に呼ぶ
②農園に着陸
③ドローンへ農作物を積み込み、離陸
④集荷所へ着陸後、農作物を積み下ろす

実施体制
代表事業者:慶應義塾(プロジェクト全体管理、データ収集・分析など)
共同事業者:神奈川県(地元農家・住民等との調整)
実証実験運営:ブルーイノベーション(フライト準備・運営)
機体提供:SkyDrive
協力団体:小田原市

使用機体
SkyDrive製 試験機体

飛行ルート