2020年12月14日、ブルーイノベーションと東京設計事務所は、球体ドローン「ELIOS2」に小型ガス検知器を搭載し、雨天時の下水貯留施設である篠籠田貯留場(千葉県柏市)内において、下水管内のガス濃度測定の実証実験を行ったことを発表した。

 ブルーイノベーションは、東京設計事務所と共同で下水管内でのドローンによる効率的な点検業務の実現に取り組んでいる。今回行った下水管内のガス濃度測定の実証実験では、ドローンが内部100mまで飛行してガス発生状況を確認することができた。作業員が入孔することなく下水管内部までガス濃度を測定できたのは、業界初(ブルーイノベーション調べ)だという。

雨水管渠内に進入するELIOS2

 老朽化するインフラの点検には、調査困難な箇所や危険を伴う点検作業などの課題がある。下水道では、内部で発生するガスに維持管理や点検作業の上で大きく悩まされている。下水中の微生物が繫殖することで生成される硫化水素が高濃度化し、管の腐食・破損や道路陥没の原因となっているが、硫化水素は100ppmを超えると呼吸器損傷の危険があり、また、下水中の微生物の呼吸や酸化等で酸素欠乏状態にもなり、大気中約21%の酸素濃度が10%に低下すると命の危険がある。実際に硫化水素や酸素欠乏による死亡事故も発生しているため、作業員の安全が確保できず立入困難な箇所が多くあるという。これまでは投入口付近のガス濃度しか測定できず、危険度を判断できない状況で作業員が入っており、下水施設内部の硫化水素、酸素等のガス濃度の状況確認は喫緊の課題となっていた。

 今回の実証実験では、約45gの小型ガス検知器(理研計器製)をELIOS2に搭載して雨水管渠内を飛行させ、飛行地点の酸素濃度および温度検知を行った。その結果、それぞれの地点での酸素濃度と温度を確認することができた。また、別の人孔(マンホール)において硫化水素濃度を測定したが、冬季で低温のため検出されなかった。

ELIOS2 小型ガス検知器搭載のイメージ
理研計器製ポータブルガスモニター「GW-3シリーズ」

 ブルーイノベーションでは、安全でスピードが早く、低コストで調査可能なドローンに着目し、下水道を含めたインフラ点検の課題の解決に取り組んでいる。今後も下水道管路や処理場内だけでなく、ボイラー内の一酸化炭素濃度、タンク内の酸素濃度など、測定ソリューションの開発に取り組んでいく、としている。

実証実験結果

 12月10日、柏市篠籠田貯留場内において、川へと雨水を放流するボックスカルバートタイプの雨水管渠内でガス検知器を搭載したELIOS2を飛行させ、約100mの地点まで進入して酸素濃度を測定した。その結果、人体に無害な程度ではあるが、通常濃度より0.3%(3,000ppm)の濃度低下が確認できた。また、2回目の測定では、データ値に変化はなく均一な数値であった。これは1回目の飛行の際に内部の空気が攪拌され均一化されたためと考えられ、1回目の飛行で測定することが重要だと分かった。また、別の人孔において硫化水素濃度を測定したが、冬季で低温のため硫化水素の発生は確認できなかった。

酸素濃度の調査結果
雨水管渠内での酸素濃度検知地点

ELIOS2を活用した屋内狭小空間の点検ソリューションについて

 ブルーイノベーションは、点検分野に特化したドローン機体開発のベンチャー企業であるFlyability SA(以下Flyability)と2018年に業務提携し、屋内狭小空間での飛行に適した性能を持つELIOS2を採用、屋内点検分野での新たなソリューション・サービスを展開してきた。同社の機体は、これまで屋内で懸案のコンパスエラーがなく、パイプラインや狭小空間で安定した飛行が可能である。ブルーイノベーションではこの機体を活用し、2018年6月からプラント、発電所、大型の工事、下水道等を中心に約120現場以上の屋内施設で導入を進めてきた。

▼ELIOS2
https://www.blue-i.co.jp/bi-inspector-elios2/