2020年12月9日、Volocopterは、シンガポールと2年間の緊密な協力関係を経て、シンガポールでエアタクシーサービスを開始するというコミットメントを発表した。同社は、シンガポール経済開発庁(EDB)およびシンガポール民間航空庁(CAAS)と協力して、今後3年以内に東南アジアの都市国家、シンガポールでエアタクシーサービスを実現する計画であるという。

 Volocopterは2019年10月、シンガポールの中心部、マリーナ・ベイ地区を巡るエアタクシーのデモフライトを完了し、オブザーバーたちにUAM(Urban Air Mobility)がどのようなものなのか体感する機会を提供した。シンガポールでのサービス開始に先立ち、CAASや欧州航空安全機関からの承認など必要な規制当局の承認を取得する。これを達成するため、Volocopterは商用エアタクシー運行開始の承認取得の前に、包括的なテスト、飛行試験、評価、認証を実施する、としている。

マリーナ・ベイ地区で行われたエアタクシーのデモフライト(2019年10月)


 VolocopterのFlorian Reuter最高経営責任者(CEO)は「シンガポールは、新しいテクノロジーの適応と生活における主導的な役割で有名である。前回のフライトでEDB、MOT、CAASとの協力が成功したことは、アジアで電動エアタクシーサービスを開始するのにシンガポールが最適であることを示している。研究開発を行っているシンガポールの研究機関は、これに不可欠な役割を果たしている。自動運用のためのルート検証、材料科学、バッテリー技術に関する研究などのトピックスは、当社の長期的なビジネスの成功にとり極めて重要である」と語った。

 最初のルートは、マリーナ・ベイのスカイラインの美しい景色を楽しめる、南部の海を巡る観光ルートとなる見込みである。その後は、国境を越えたフライトが含まれる可能性もあるという。これにより、地域の接続性が強化され、シンガポールの最も近い経済中心地への旅行体験が大幅に向上する。

 EDBのTan Kong Hwee執行副長官は「アーバンエアモビリティーは、われわれがシンガポールの成長産業として特定した、より広範なモビリティーセクター内の新興分野である。シンガポールは、自動運転車、電気自動車、アーバンエアモビリティーの重要な地域的テストベッドであり、これには2019年のVolocopterによるテスト飛行の成功も含まれる。Volocopterが商業・研究開発活動のアンカーとしてシンガポールを選んだことをうれしく思う。これは、モビリティーエコシステムのための新たな能力を構築し、シンガポールにとって多くの刺激的な機会創出をサポートするものになる」と述べている。

 また、CAASの無人システムグループ上級ディレクターTan Kah Han氏は「この新しいアーバンエアモビリティーの分野でVolocopterとの協力を継続することを楽しみにしている。これにより、規制や技術を業界と共同でつくり出す機会が得られ、シンガポールの将来の交通手段を実現するイノベーションが促進される」と語った。

 Volocopterのエアタクシーは垂直離着陸し、排出物を出さない航空機である。都市のさらなる移動手段として設計されており、最大2名の乗客を直接かつ静かに目的地まで運ぶことを実現する。