2020年11月26日、清水建設と米国カーネギーメロン大学(以下CMU)は、インフラRC構造物の劣化予測技術の高度化を目的に、ドローン計測によるRC構造物の画像情報から、微細なひび割れ等の損傷情報も反映した高精度3次元モデルを形成するシステムを共同開発したことを発表した。
 今後、この高精度3次元モデルをベースに、構造物の耐力や余寿命をシミュレーション解析する技術の開発を進め、データ計測から評価・診断まで一気通貫で対応できるインフラ劣化予測システムの確立を目指す。

開発の背景

 高度経済成長期に集中的に整備されたインフラ構造物の老朽化が進むなか、適切な維持管理により構造物の長寿命化や事故災害リスクの低減を図ることが社会的な課題となっている。一方、インフラの維持管理を担う技術者は減少傾向にあり、これらの課題を解決するためには、目視点検を代替するICT計測技術や、構造物の劣化状況を的確かつ高精度に診断・予測できる解析技術の開発が不可欠である。

 そこで、清水建設とCMUは、2018年3月にインフラ劣化予測システムの共同研究開発に着手。今回の成果は、共同研究開発の第一フェーズという位置付けであり、シミュレーション解析の精度を高めるために欠かせない、損傷状況まで正確に反映した構造解析モデルの自動生成に向け、従来技術では実現できなかった位置・形状の誤差を数mmレベルに抑えた精緻な3次元モデルの形成を実現した。

システム概要

 今回開発したシステムは、ステレオ画像計測とレーザー計測(LiDAR)を併用するUAV搭載型の3次元計測システム、独自のアルゴリズムによる3次元モデル化手法、画像から構造物の変状を抽出する画像解析AI技術を組み合わせて構築したものである。

計測~解析評価まで一気通貫のインフラ劣化予測システム(全体イメージ)

 構造物の3次元計測には、高解像度カメラ2台で構成するステレオカメラとLiDARを組み合わせた計測装置を利用し、取得した写真画像等から3次元形状を高精度に形成する。具体的には、ドローンに搭載した計測装置で対象構造物を計測し、ステレオカメラが取得した3次元点群データの測位精度をLiDARの位置情報で補正・補強することにより、精緻な形状の3次元モデルを形成する。

ドローンによるRC試験体の計測状況

 併せて、画像解析AIがステレオカメラの高解像画像から検出したひび割れ形状を3次元モデルに重畳(ちょうじょう)することで、損傷情報を包含した高精度3次元モデルが完成する。3次元モデルの形成は、橋長200m程度の一般的なRC橋梁を対象にした場合、計測を含めて数日程度で完了する。

損傷部まで復元した構造物の高精度3次元モデル(RC試験体)

 共同研究開発の第一フェーズでは、清水建設が開発項目の設定とRC構造物の計測、CMUがドローン制御、3次元モデル化手法、ひび割れAI検出等の技術開発を担当した。続く第二フェーズでは、ドローンの自律飛行制御等、計測・評価技術の高度化を図るとともに、同社が構造解析・診断等の技術開発を行い、インフラ劣化予測システムの完成を目指す、としている。