2019年11月18日、エアロネクストは、産業用ドローンの次世代コンセプト「空飛ぶロボット(Flying Robots)」の社会実装を加速させるため、研究開発の一つの重要な拠点を中国深圳市に置き、産学連携を積極的に推進し、南方科技大学と共同で研究開発ラボ “SUSTECH(SIR)- AERONEXT Flying Robots Technology Shenzhen Lab” を設立することを決定したと発表した。

 具体的には、南方科技大学の最新のロボティクス研究を行うロボティクス研究院(SIR:SUSTECH Institute of Robotics)と連携し、その教授陣、生徒と共に、広大なキャンパスや関連施設、大学間ネットワークを活用し、先行する中国ドローン産業の潜在ユースケースを発掘、実証実験を行いながら、次世代ドローンの基盤となる要素技術の研究開発、安全基準を満たすための実証実験のデータ獲得、「空飛ぶロボット」の具体的な用途開発、将来のドローン産業を担う優秀なエンジニアの獲得や育成を目的として、5年間、共同で研究開発を推進していく。同大学との共同ラボの設立は日本企業としては初の事例となる。

左:調印式の様子。写真向かって左より、南方科技大学ロボティクス研究院院長 融亦鳴氏、エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏
右:写真向かって左4番目より、南山区科技創新局局長 劉石明氏、エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏、南方科技大学ロボティクス研究院院長 融亦鳴氏、同研究院教授 張巍氏、同研究院副教授 劉偉氏
左:ラボのプレート披露の様子
右:SUSTECH(SIR)- AERONEXT Flying Robots Technology Shenzhen Labのプレート

 エアロネクストの独自の重心制御技術「4D GRAVITY®」は、無人航空機(UAV)における機体の構造を根本的に見直し開発したもので、その安定性、信頼性で産業ドローンの用途範囲を大きく拡大する。既に様々な用途を想定した、4D GRAVITY®搭載の産業用ドローン『Next』シリーズの原理試作を複数種類発表し、国内では今後年内の量産体制の整備を視野に入れている。中国市場においては、2019年5月の中国深圳市に現地法人「天次科技(深圳)有限公司(英文名 Aeronext Shenzhen Ltd.)」を設立後、6月には中国産業ドローンメーカー大手のMMCおよびSMDと戦略的提携を発表し、重心制御技術「4D GRAVITY®」の市場投入を進めている。

 現在、産業用ドローンは、人口減少社会・高齢社会における人手不足や人件費、人で実施する場合の危険度等に課題を抱える「物流」「農業」「警備」「設備点検」「災害対策」等、様々な分野での活用が期待されているものの、写真や動画を撮るという、いわば「人間の目」としての用途に利用されており、短時間、短距離、また良好な気候条件の時のみという限定的な条件下での使用が現実である。そのような状況の中「4D GRAVITY®」搭載の産業用ドローンであれば、その安定性により、複数のペイロード搭載や、ペイロードの位置が側面や上部に搭載しながらも安定して飛行することが可能となり、またその安定性によるエネルギー効率の改善により長時間、長距離の飛行を実現できることから、一度の飛行中に「写真や動画を撮る」だけの単一作業だけでなく複数の仕事を実施することができる。つまり、現在の産業用ドローンが「空飛ぶカメラ」領域であるとすれば、次世代の産業用ドローンに求められるのは「空飛ぶロボット」であり、「4D GRAVITY®」搭載の産業用ドローンだからこそ、次世代コンセプト「空飛ぶロボット」を現実化できるのだという。

 2019年9月には、この「空飛ぶロボット」の具現化に向け、独自の自動航行プラットフォームを中心とする顧客向けサービスをコアにした産業ドローンソリューション提案に強みをもつセンシンロボティクスと、顧客・用途開発に関する戦略的業務提携を結び、日本国内における「空飛ぶロボット」の新しいユースケース開発を加速させている。センシンロボティクスとは、今回立ち上げる共同ラボの企画・運営でも協力体制を築いていく、としている。

 この「空飛ぶロボット」を現実化させるためには徹底した研究開発が不可欠であるが、日本においては、社会実装やそのための基盤固めにはまだ時間がかかるというのが一般的な見解である。一方で、深圳市には、数百のドローン企業が存在し、UAVの研究開発での豊富な経験と実績、また研究開発者、エンジニア人材、実証実験のための飛行環境が充実している。それが、エアロネクストが今回、次世代ドローン研究開発の拠点を深圳市に置くことに至った背景である。

 その深圳市に国家高等教育総合改革試験高として設立された南方科技大学は、イノベーション型人材の育成を強化している大学で、学内には機械、コンピューター、材料科学および航空宇宙等17の学院、さらにロボット、人工知能、先進製造、および大規模コンピューティング等、26の研究センターを有している。その中でロボティクス研究院は、産業ロボット技術、バイオメカニカルロボット、医療リハビリロボット、コントロール及び無人システムの4つの研究所とロボット教育実験室を持ち、ドローンに関しては、フライトコントローラー開発、非GPS環境下での自律制御、ドローンに搭載可能な各種センサー開発等、多岐に渡る研究が行われている。

 今回、南方科技大学ロボティクス研究院との共同ラボ設立は、日本では実現し難いスピードとレベル感で、次世代ドローン「空飛ぶロボット」の社会実装を加速させることができる、現時点での最適な方法であると考えているという。

 この共同ラボ設立にあたって、調印式で挨拶に立った南方科技大学秘書長 陳思奇氏は「産学連携することにより、双方の強みを生かしながら、次世代ドローンやフライトコントロールシステムの研究開発を行い、新技術を開発し、ドローン業界の発展を促進することを期待しております。」と述べている。さらに、南山区科学技術創新局局長 劉石明氏は「SUSTECH(SIR)- AERONEXT Flying Robots Technology Shenzhen Labは必ず中日間産学連携の成功例になり、中日間のハイテク連携と人材交流を促進することができると確信しております。」と話した。また、エアロネクスト代表取締役CEO田路圭輔氏は「この度の共同ラボの設立によって、我々が描く次世代ドローンのコンセプト「空飛ぶロボット」の実現が大きく加速し、様々な産業セクターの自動化省力化を大きく前進させることができると確信しています。」と期待を込めた。

南方科技大学秘書長 陳思奇氏
南山区科学技術創新局局長 劉石明氏
エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏

 エアロネクストは、掲げたビジョン「ドローン前提社会の実現」と「新しい空域の経済化」に向け、ドローンの社会実装をより加速するべく引き続き邁進していく、としている。