2019年10月9日、イームズロボティクスとマゼランシステムズジャパンは、パートナーシップ契約を結び協業を開始したことを発表した。

 同パートナーシップ契約の締結により、イームズロボティクスとマゼランシステムズジャパンは中小農業用機械開発分野(ロボット農機)において、両社の関係を強化すると共にイノベーション創出を加速させる。

あらゆる電制御走行車両の自動運転を実現する「自律走行ユニット」の開発

 イームズロボティクスは、国内で自社開発したプログラムにより、ドローンをはじめとする無人機の自動運転を実現している。基礎技術としての自律走行の手法は確立され、マーケットも成熟しつつあるが、従来のGNSS受信機を使った走行性能ではメーター級の誤差があり、地上走行にて実走させる段階になかった。

 マゼランシステムズジャパンは、準天頂衛星「みちびき」のL6信号を受信し、高精度かつ単独測位を実現するGNSS受信機を提供している。同社製の受信機はセンチメートル級の精度を実現しており、イームズロボティクスが開発した自動運転プログラムとの親和性が高いため、UAV(ドローン / 無人航空機)やUGV(無人車両)などのロボット分野において、自律飛行・自律走行を実現するための超高精度による制御が可能となった。

 イームズロボティクスとマゼランシステムズジャパンは、両社の強みを活かした「自動走行ユニット」を共同で開発することで、屋外における高精度で正確な自動運転を実現する、としている。

開発スケジュール予定:
・「自律走行ユニット」の共同開発を開始(2019年夏)
・「自律走行ユニット」のサービスリリース(2020年初旬予定)
・「自律走行ユニット」の量産・販売(2020年予定)

ロボット農機のレベルと各社の開発状況

 農林水産省では、農業用機械の自動運転における技術水準によってレベルを定義しており、レベル0が走行や作業、非常時の緊急操作など全てをオペレーターが手動で実施する「手動操作」、レベル1が慣性計測やGPSなどを備え、直進走行など操作の一部を自動化した「搭乗状態での自動操舵」、レベル2が無人状態で農機が自動走行することが可能だが、オペレーターが圃場内やその周辺から常時監視し、危険の判断や非常時の操作を実施する「有人監視下での自動化・無人化」、そしてオペレーターがモニターなどで遠隔監視する下、自律制御を行うレベル3の「完全無人化」となっている。

 既に、大手農機具メーカーでは、自動運転機能を搭載したトラクタなどが登場しており、GNSS以外にもレーザーセンサや音波センサなどを駆使し、レベル2程度までの自動運転が実現されている。

 一方、中小農機具メーカーでは、開発力不足、資金面から、新たな自律制御化の開発が困難な現状がある。

みちびき対応型UGV自動運転試験

中小農機具メーカー向け「後付け」による自律走行の実現

 ゼロから自動運転システムを開発するよりも、「自律走行ユニット」を後付けすることができれば、自動運転は早く簡単に実現できる。「自律走行ユニット」は、既存の電子制御されている走行車両であれば、マシンの大小関係なく自律走行をさせることが可能である。

 エンジン駆動タイプ、バッテリー駆動タイプなど、動力源が異なる場合でも、操作系が電子制御化されていれば搭載することができる。

 「自律走行ユニット」は、タブレット(Windows対応)から任意でルートを構築し、走行させるモードの他、指定した範囲をジグザグ走行するモードや、特定のポジションで停止、旋回などのアクションを指定することも可能。

 一方、電子制御化された農機具はメーカーごとに制御方法が異なるため、自動運転を実現するためのサービスメニューも用意している。エンジニア立会いのもと「自律走行ユニット」の搭載方法の検討や電気信号の受け渡し方法などについて協議をしたうえで実装し、最終的な量産・販売までを支援する。

 両社から提供する「自律走行ユニット」の最終成果物は、農機具メーカーごとの専用品として量産可能な状態で納品する。「自律走行ユニット」はイームズロボティクス本社(福島県)にて量産の予定。

多周波対応GNSSアンテナ(マゼランシステムズジャパン)