3月22日から24日の3日間、千葉県千葉市の幕張メッセで「Japan Drone 2018」が開催された。2016年3月に第1回が開催されてから3回目となる今回は、出展社・団体が160に増え、来場者も3日間で1万1000人を超えることとなった。
主催者であるJUIDAは、強い結びつきのあるブルーイノベーションと共同でJUIDAブースを展開。JUIDAでは2018年を“物流ドローン元年”と位置付けており、新たに「ドローンポート登録制度」をブルーイノベーション、長野県伊那市とともに発表し、ブースには実際に使用されるドローンポートの実物を展示。また、JUIDAブースに隣り合うブルーイノベーションは、Japan Droneの開幕直前に発表したばかりの、オリジナルドローンによるパイロット支援システムと、新たに業務提携したスイスのFliability社が開発した、屋内点検用ドローン「Elios」を展示していた。
例年、会場の中でも大きな展示スペースを割いているDJI JAPAN。今年は独自のフライトケージでのデモは行わず、また、先ごろ発売されたばかりのMavic Airをはじめとするコンシューマー向けのモデルの展示は控えめに、産業用途に特化した内容となっていたのが印象的だ。その代りにブース内には、DJIの製品をさまざまな産業用途向けにカスタマイズしたドローンを所狭しと展示。スカイシーカーが販売する物資搬送用ドローン「QS8」や、アマナビの空撮部門Airvisionが制作したライティングドローンをはじめ、測量、点検、農薬散布といった用途に最適化した機体が並んでいた。
またDJI JAPANとしては産業向けの汎用機、MATRICE200/210に加えて、周辺を飛行するドローンの位置を表示できる「AeroScopeレシーバー」を展示。さらに建設機械メーカー・コマツのスマートコンストラクション事業向けに、MATRICE100をベースにSkycatch社と開発し、1000台を納入した機体を披露した。また同社ではドローンによる写真測量ができる人材育成プログラムを、この夏から提供すると発表している。
DJIと並んで大きな展示ブースを構えていたのが「EAMS LAB(イームズラボ)」と「EAMS ROBOTICS(イームズロボティクス)」。同社はこれまで日本のドローン開発の一翼を担ってきたメーカー「エンルート」の流れを汲む「エンルートラボ」が3月初旬、親会社である「エンルートM’s(エンルートエムズ)」を引受先とする第三者割当増資を行い、商号変更を行う形で生まれ変わった会社である。同時に親会社のエンルートM’sはイームズロボティクスと改称し、EAMSグループとしてドローンとロボットの開発を行っていくという。
同社のブースではこれまでに同社が開発してきた製品群を一堂に展示。イームズラボはUAVだけでなくUGVやUSV、UUVといったさまざまな形の自律型無人機を開発している。さらにディープラーニングを用いた空間認識による衝突防止といったAIの開発にも長けていて、これらを組み合わせたドローン製品を、顧客のニーズに合わせて作り出している。ブースではそうしたドローンの数々を展示していた。
今回のJapan Droneの会場の中でひときわ大規模なブースとなっていたのがマクセルだ。これまでのJapan Droneには、ドローンメーカーのブースの中でサプライヤーとして出展してきたが、2017年に「日立マクセル」から「マクセル」に社名を変更したこともあり、そのお披露目も含めての大がかりな出展となった。
展示の中心は「ドローン用インテリジェントリチウムイオン電池パック」だが、実はこの製品は昨年のJapan Droneでも出展していた。その後1年を経て、今年はこのバッテリーを搭載する多くのドローンを一堂に展示。産業用の大型機ではまだまだラミネート型セルをフィルムでパックしたものが多い中、過充電保護、充電過電流、温度保護機能などインテリジェント化したこのバッテリーの採用を推進してきた成果だ。
独自のフライトケージではドローンメーカーだけでなく、さまざまな大学をはじめ研究機関が開発しているドローンのデモを実施。こうしたドローンにもマクセルのインテリジェントバッテリーが使われている。つまりたとえドローンの機体が変わっても、バッテリーは変わらず運用できるという、日本のドローン用バッテリーのスタンダードとなりつつあることを示したブースだった。
Japan Drone 2018開幕の1週間前に、革新的なドローンを発表したのはエアロネクスト。「4D Gravity」という技術を搭載したドローン2機をブースで展示していた。ひとつは機体の中心を360°VRカメラを搭載した“棒”が貫く個性的なスタイルの「Next VR」というドローン。もう一機は機体下部に吊り下げる形で搭載した荷物の水平を保ったまま、機動的な飛行ができるドローンの「Next DELIVERY」だ。
いずれも4D Gravityという重心制御技術を用いたもので、重心がドローンの移動に影響を及ぼさないため、ドローンの燃費、速度、信頼性の向上が期待できるという。そのため、今回披露したVR撮影や宅配以外にも、検査や点検など、さまざまな産業用途でそのメリットが生まれることに期待が膨らむ。そうしたこともありこの4D Gravityという技術は、今回のJapan Drone 2018内で開催された「Best of Japan Drone 2018アワード」で、ドローン関連テクノロジー部門を受賞している。
日立システムズはこれまで培ってきたシステム開発のノウハウを生かし、ロボティクスサポートサービスのひとつとして、空撮画像を顧客のビジネスに合わせて最大限活用するための「ドローン運用統合管理サービス」を出展。データの管理、加工、診断など、同社が用意するさまざまなサービスの中から、必要なサービスを組み合わせて利用できるという。データの「3次元管理台帳」やそこにある画像からAIが構造物の劣化を発見する「劣化診断」、さらには現場と事務所で映像を転送する「リアルタイム中継」といったサービスを展示。さらに3次元データからリアルな縮小モデルを作る「ドローン3Dモデル造形サービス」も参考出展として展示していた。
福島県南相馬市の配送サービスや千葉県御宿町のゴルフ場でのデリバリーサービスなど、将来のドローン物流を見据えた実験的サービスを精力的に行っている楽天ドローン。ブースではこうした商品の配送に使っているドローンと、それを管理するアプリを展示。また、昨年12月に提供を始めた空域管理ダッシュボードと、ドローンユーザー向けのアプリ「AirMap」のデモを行っていた。
様々な建造物向けのスペースフレームの製造・販売を手掛けるテクノシステムは、同じ構造のスペースフレームを機体に採用したドローン「ヒコーロボ」を出展していた。このスペースフレームは棒状のフレーム部材を三角錐状に連続的に接続した立体トラス構造で、東京ビッグサイトのような大空間の屋根や宇宙ステーションのフレームなどにも採用されている構造だ。この構造をドローンの機体に採用することで、機体の強度を高められ、ひいては軽くてより大型の機体を作ることができるという。
また、スペースフレームの文字通り、フレーム間に空間があるためそこにローターを配置すれば、フレーム自体がプロペラガードの代わりになるだけでなく、その空間に搬送する物資などを収めることもできる。また、このスペースフレームは構造材に軸方向の力しかかからないため、高価なカーボンパイプなどを使用しなくても、細い木製の丸棒やアルミパイプといった安価な材料でも十分な強度を保てるという。展示してあったドローンは一辺3mクラスのオクトコプターだが、より大きな機体も軽く作ることが可能。同社では2025年に大阪万博が開催される場合には、そのタイミングで人が複数乗れるドローンを披露したいという。
今回のJapan Drone 2018は、ドローン全般を広く展示するというのではなく、より産業用に特化した内容となっていた。ドローンを使った数々の活用事例の展示や、マクセルが示したようにバッテリーの共通化など、よりドローンが社会の中で活用される、そして活用されやすい環境作りがなされていることが示されたJapan Droneであった。