写真:展示されたドローン

 Nearthlabは、2025年2月19日から21日まで東京ビッグサイトで開催された「第23回 SMART ENERGY WEEK~スマートエネルギーWEEK~(WIND EXPO ~風力発電展~)」に出展した。同社は風力タービンの検査に特化したAI搭載型のドローンソリューションを展示し、ブレードの外側だけでなく内部まで点検できる最新技術を紹介。点検作業の自動化と効率向上に貢献するNearthlabの最新技術について詳しく話を聞いた。

ドローンで風車点検の精度向上と時間短縮を実現

 Nearthlabは韓国に本拠を置き、2016年からドローンによる風力発電設備の検査を行っている。提供するソリューションとして、ドローンの正確な自律飛行とディープラーニングを活用したAIによるデータ分析技術を開発。これによって点検時の稼働停止時間を大幅に短縮し、エネルギーの生産効率を高めることで風力発電機メーカーや資産所有者を支援している。

 現在、同社の点検用ドローンは、事前に風車の情報を設定することで自律飛行が可能となり、効率的な点検作業を実現する。撮影データは専門家が分析し、1週間以内にレポートとして提供される。担当者は「従来の方法と比較して点検作業の自動化が進んでいます。人の介入を最小限に抑えることで、安全性と作業効率の向上を図っています」と述べた。

風車の稼働停止時間を6時間から1時間に短縮

 ドローン点検の最大のメリットは作業時間の短縮だ。従来はブレードを一旦停止し、部分ごとに点検する必要があったが、Nearthlabの技術を活用することで風車を長時間停止させずに点検業務を行うことが可能になった。

 担当者は「人による点検では6~7時間の稼働停止時間が発生していました。当社の技術を活用すれば1時間以内に全体の点検が完了します。日本での実証試験では1日あたり最大8基の風車を点検しました」と話した。

避雷針点検用ドローンを組み合わせて内部も確認

写真:避雷針点検用ドローン

 今回の展示では、新たに開発された避雷針(レセプター)点検用ドローンが注目を集めた。日本では落雷が多く、ブレード先端の避雷針の定期点検が義務付けられている。経済産業省の規定により、定期的な通電確認が求められるが、レセプターは直径数センチと小さく、従来のカメラや非接触型センサーでは測定が難しかったため、人による点検がほとんどであった。

 Nearthlabは、レセプターに直接触れて通電をチェックできる専用のセンサーをドローンに搭載し、点検作業の大幅な効率化を実現した。担当者は「ブレード先端の避雷針にセンサーを接触させ、5秒間の測定で通電の有無を確認できます。この場合、ドローンの操作は手動となりますが、特別な技術は必要なく、産業機を扱うドローンパイロットであれば対応できるでしょう」と説明した。

写真:断線箇所を特定するドローン

 レセプター点検用ドローンのほかに、通電するはずが断線していた場合に、断線箇所を特定するドローンも用意されている。ドローンの上部に取り付けられた球体のセンサーによって、ブレードの外側から非接触で検査が可能だ。

ブレード内部点検用360度カメラ搭載ロボットも提供

写真:ブレード内部点検用360度カメラ搭載ロボット

 Nearthlabは、ブレード内部の点検技術も開発。ブレードの形状は先細りとなっており、人が入れるのはブレードの半分程度で内部全体の点検は難しい。そこで、同社は狭い空間でも自由に点検が可能な360度カメラを搭載した地上走行型のロボットを開発し、ブレード内部の詳細な点検を実現した。

ソフトバンク株式会社との提携で日本市場へ本格展開を予定

 Nearthlabの風車点検ソリューションは、アメリカ、ヨーロッパ、南米など世界各国で導入されている。日本市場ではソフトバンクと提携し、実証実験を進めており、本格展開に向けた準備を進めている。日本での提供を目指すソフトバンクの担当者は「現在、パイロットの育成にも力を入れており、ソフトバンクのパートナー企業向けにトレーニングを提供しています」と説明した。今後は、海外市場での成功事例を活かしながら、日本の環境に適した点検技術を確立していく方針だ。

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