2023年秋に行われたジャパンモビリティショー 2023に突如現れた、SUBARUの空飛ぶクルマを覚えている人も多いのではないだろうか。フロントに輝く六連星エンブレム、プロペラを覆いキャノピーを備えたコックピットを持つスタイリッシュなボディ。乗用車のようなフロントライトの形状。空飛ぶクルマの名を体現したようなマシンは事前予告なく登場し、来場者の度肝を抜いていた。今回の2024国際航空宇宙展では、さらにブラッシュアップして展示されていた。
実用的な開発が進む「SUBARU AIR MOBILITY Concept」
国際航空宇宙展にブースを構えたSUBARUが目玉として打ち出したのが、この空飛ぶクルマ「SUBARU AIR MOBILITY Concept」だ。だが、ジャパンモビリティショー 2023で展示された白い機体とはカラーリングが異なり、青をまとう。実は白い機体はモックアップであり、今回展示された青い機体が、飛行実証実験に使用されている実機だ。その証として機体側面には、試作を表すJXから始まる機体記号が掲げられていた。飛行実証実験では地上確認試験やホバリング試験が行われている。
機体を観察してみると、フロントライトだけでなく、リアにも自動車のブレーキランプを彷彿とさせる赤いテールライトが搭載されている。またプロペラカバー側面にもライトが設置されており、航空機の翼に備わっている航空灯と同様に、左側は赤く光っていた。ただ、右側は航空灯の緑とは異なり青紫色だったため、デザイン上のものなのかもしれない。
プロペラ配置も独特だ。SUBARU AIR MOBILITY Conceptはプロペラを6つ持つ。プロペラを6つ持つドローンでは機体に対してプロペラが斜め前後に4本、真横に2本設置されているケースが多いが、この機体は真横ではなく、コックピットに対して真正面と真後ろに設置されている。プロペラがボディの前後に突き出しているような形状になり、それがスマートなデザインに拍車をかけているようにも見える。このデザインが空力的に有利なのかは取得したデータで精査しているところだという。
機体重量や飛行時間といったスペックについて担当者に尋ねたが、詳細な数字の公表は差し控えるとのことだった。ただ、機体重量は「乗用車よりは軽い」とのこと。ブースでは機体部材に電流を流す経路を設けて配線を省略して軽量化を図る取り組みも紹介されていた。様々な技術を組み合わせ、軽量化を進めているようだ。またコックピットには2人分の座席が設置されているという。
1点、モックアップから実機になって判明したのはスキッド(脚部)の形状だ。モックアップには取り付けられておらず、実機では実用本位の金属棒になっていた。デザインの観点に立つと画竜点睛を欠いた感が否めないが、着陸時の衝撃を吸収する降着装置は必須で「実験で飛ばすとなると、どうしても現実的なものが必要になります。この形状が将来の実用化に際し、我々がイメージしている降着装置ということではないです」(担当者)ということなので、今後もっと洗練されていくことに期待したい。
「自動車×航空宇宙」の技術を活かした空飛ぶクルマの開発
SUBARUでは、垂直離着陸が可能で電動の空飛ぶクルマを活用して手軽に空中移動ができるようになる「空の移動革命」に注目。そこで将来の市場参画に向けて、先行技術開発と技術実証のため、SUBARU AIR MOBILITY Conceptを開発した。同社は戦前に戦闘機を製造していた中島飛行機をルーツに持ち、現在もボーイング787旅客機などの中央翼の開発・製造や、自衛隊向け練習機、陸上自衛隊多用途ヘリコプター「UH-2」などの航空機の開発を手掛け、航空宇宙産業にも取り組んでいる。ブースで上映されたムービーでは「自動車と航空宇宙のそれぞれが得意とする技術の融合が空飛ぶクルマ実現のカギ!!」と主張していた。自動車と航空機のいずれも手掛ける同社ならではの考えといえるだろう。
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