川崎重工業はエンジン駆動のヘリコプター型ドローン「K-RACER-X2」を展示した。最大の特徴は同社が開発したバイク「Ninja H2R」用スーパーチャージドエンジンを搭載していること。バイクでありながらもスーパーチャージャーを搭載した同エンジンは、サーキット走行専用バイクに搭載され、最高速度300km/h以上で走行可能。最大出力228kW(310PS)を誇るが、ドローンに搭載するにあたっては出力の6割程度が使われているという。また、空中では上空に行けば行くほど空気が薄くなる。これに対応するため、エンジンにチューニングを施しているそうだ。
最大離陸重量は600kg程度、ペイロード(最大積載量)は200kg。最大高度3000mを飛行して、最大100km先まで物資を輸送する。エンジン駆動だけあって、電動のドローンでは実現できないスペックを発揮することがわかる。
外観で特徴的なのはエンジンから伸びたBEET製のマフラーだ。右側面2本出しのマフラーは、軽量なフルチタンを採用している。エキパイやサイレンサーは、排気の熱によって鮮やかな青色に焼けており、試験飛行を繰り返した証といえるだろう。
高齢化の課題解決に向けた山小屋での物資輸送
ユースケースとしては山岳地帯や海上での物資輸送、災害時の支援といった使用用途を想定する。担当者は「山小屋の経営者の高齢化が進んでいます。また、山小屋まで荷物を運ぶ歩荷も少なくなってきています。人手不足による問題が顕在化していますので、この機材を使って助けられないかと考えています」と、取り組みの方針について解説した。
同機は自動航行にも対応している。将来的には上記のような山小屋への往復輸送といった飛行も、ボタンを押せば実施できるところまで開発を進めたい考え。だが、離着陸の仕方などマルチコプター型とは異なる点も多いので、安全性の担保についても検討して段階を踏んで実装していきたい意向だ。
これまで川崎重工業ではヘリコプター型ドローン「K-RACER-X1」を開発。ペイロード100kgで、機体の左右に翼とプロペラを設置したコンパウンド・ヘリコプターだった。これは輸送力だけでなくスピード性能も追求したため取り付けられていたが、K-RACER-X2では物資輸送に特化する方針へ転換したため、翼とプロペラを廃止。最高速度は80km/h程度となったが、ペイロードは2倍になった。
X1、X2の開発を通じて得た知見を活かして、将来的にはペイロード200kg、最高高度3100m、飛行距離は100km以上となる量産型「K-RACER」の市場投入を目指す。バイクと航空機、両方を手掛ける同社だからこそ開発できる、パワフルで安定性の高い機体になりそうだ。
DJIの物資輸送ドローンFlyCart 30の登場以降、山小屋への物資輸送についてはかなり実証が進められており、実現可能性が探られている。ただ、同機のペイロードは30~40kgであり、大型の機材や大量の日用品などを運ぶのは苦手とするところだ。飛行距離もスペック値で8~16km程度。その点、エンジン駆動のヘリコプター型では搭載量、飛行距離ともに電動を凌駕する。量産型K-RACERが登場すれば、シチュエーションに合わせた機体の選択が可能になるだろう。
#2024国際航空宇宙展 記事