曾澤高圧コンクリートは、ドローンと衛星データを連係させて自然災害の状況把握や避難誘導を行う精密避難支援システム「The Guardian(ザ・ガーディアン)」を開発し、6月29日から7月1日の期間、東京ビッグサイトで開催された第1回地域防災EXPOに展示した。

 ザ・ガーディアンは、地震や豪雨災害による津波、河川の氾濫、土砂崩れ等のデータを素早く収集し、スマホを介して地域住民に伝達する自治体向けの災害対策用ソリューションだ。産業用無人航空機のほか、自律制御型格納庫、地球観測衛星、気象観測衛星、分散自律型同期座標空間の5つで構成されており、各機能によって情報収集を行う。

最大5時間以上の飛行を実現した純国産ドローン

 今回展示されたのは、災害時の情報収集のひとつとして広域の状況把握を担う産業用無人航空機「Engine Drone AZ-500」だ。これまでさまざまなメーカーからエンジンを搭載したハイブリッドドローンが開発されてきたが、その中でもAZ-500の寸法はH1052×L2677×W2677mmと非常に大きい。また、その大型機を長時間飛行させることもあって搭載するエンジンはオートバイ用の500ccエンジンを採用している。AZ-500は、オートバイメーカーでエンジンを手掛けてきたエンジニアを中心に、アラセ・アイザワ・アエロスパシアルLLCが開発してきたものであり、エンジンはドローン用に構造を設計しなおしたという。エンジン下部にはオートバイではお馴染みのヨシムラのマフラーが装着されているなど、遊び心も感じられる。

 4つのプロペラはギアで連結しており、すべてが同時に回転する構造だ。また、モーター周りに使われているアルミ部品などの細かな部品からフライトコントローラーまで独自に開発し、純国産に拘ったドローンとなっている。

 主に防災、防衛、物流、建設などで活用することを目的に開発されたAZ-500は、燃料(最大容量50ℓ)を含むペイロードは50kg未満とし、ペイロード5kg時には5時間以上の長時間飛行が可能となる。さらには、大型で安定した飛行から耐風性能は20m/sを誇り、雨天の飛行にも対応する。

 現在は法規制の兼ね合いから、飛行できる空域は海岸や河川上空に限られてしまう。そのため、緊急を要する災害時での活用を目的に、被災直後のライブ中継や地形データの収集を広範囲で行うことを推奨している。

 さらに驚くのは機体の開発だけでなく、災害対策用のポートを開発していることだ。ポートの素材には、曾澤高圧コンクリートが得意とするコンクリートを使用し、据置き型の機体の格納庫として使われる。格納庫内には自動燃料供給装置を設けるほか、地震の揺れを感知するセンサーを備え、ポートが事前に設定した揺れを感知するとドローンが自動で飛び立つ仕組みを検討している。ドローンは事前にプログラムされた飛行ルートを自動航行で飛行し、情報収集を無人で行う仕組みだ。

日本の河川を表した図。

 最後に担当者は「日本は全域にわたって河川が通っており、河川の氾濫は自治体の課題となっている。また、自治体の担当者からはハザードマップを作成するまでは良いが、それを活用した対策方法に悩んでいるという声が多く、ドローンを使った災害対策には可能性を感じている」と話す。

 アラセ・アイザワ・アエロスパシアルLLCは、災害以外にも物流や建設現場の業務を担うドローンとして、1000ccのエンジンを搭載したさらなる大型機を開発しているという。