會澤高圧コンクリートと福島県浪江町は、2021年4月に連携協定を締結して、豪雨・津波防災支援システム「ザ・ガーディアン(仮称)」の実用化開発を進めている。
 2022年3月1日にその中間報告会を浪江町庁舎において実施し、同システムの中核テクノロジーのひとつである新開発の防災用大型エンジンドローン「AZ-500」と、ドローンが自動的に飛び立てる専用格納庫「The Port」の実機を公開した。

 創業よりインフラ整備に携わってきた會澤高圧コンクリートは、津波防災や豪雨災害に対する追加の備えとして、衛星データやドローンの撮影映像などを組み合わせた住民避難のための統合防災支援システムの構築を進めている。2023年4月に浪江町南産業団地に研究開発型生産施設「福島RDMセンター」を建設するのを機に、ザ・ガーディアンの実装と新しい防災テック産業の育成を目指して、同社と浪江町が開発連携することに合意した。

 ザ・ガーディアンは、ゲリラ豪雨等による河川氾濫や地震による津波被害といった、主に水に関連する緊急事態について早期警戒情報を住民サービスとして提供する、避難支援型の衛星・ドローン活用統合情報システムである。

 具体的には、地球観測衛星の撮影データにより川幅の経時変化を監視し、気象衛星の降雨予測データと地表面をデジタル化した三次元データを組み合わせることで、河川氾濫を早期に予測。河川氾濫データ等を活用した防災情報を、住民のスマートフォンに通知するパーソナルな河川防災システムを構築する。

 また大地震が発生した際には、地震発生の信号に即応して格納庫からドローンが自動的に飛び立ち、海岸の映像を5時間以上にわたり住民のスマートフォンなどに配信し続ける津波警戒のブロードキャストシステムを構築する。

 開発期間は、2021年4月から2024年2月の約3カ年を予定している。

中間報告会の様子

 新開発した500㏄エンジン搭載ドローン「AZ-500」は、2022年中に浪江町内に別途設置する耐震性能と給油タンクを持つコンクリート製ハウジング内に防災専用機として常設し、実用化に向けた検証などを進める計画だという。統合システムとしての実装は2024年3月を予定している。

 アイザワグループのアラセ・アイザワ・アエロスパシアル製となる純国産の大型エンジンドローンAZ-500は、高い安定性と50kgの高ペイロードを備え、航続時間は5時間以上(ペイロード5kg時)となる。防災活用に求められる降雨下や強風時の飛行などにも対応する。

 牽引移動が可能なドローン格納庫「The Port」は、ポート上部で離発着を行い、リフト機能で格納する仕組み。自動給油装置や自動検査装置、飛行支援の通信機能、RTK-GPS基地の機能を備え、災害時にも正常稼働できるよう電源を内蔵したことで48時間のオフグリッド動作が可能だ。

 AZ-500には今後、リアルタイムに現実空間と仮想空間が同期し続けるデジタルツイン技術を活用した自律航行システムを採用する予定だという。大規模な地震時に海岸の映像を配信し続けるだけでなく、河川防災のために河川上空を定期的に自律航行し、状況を撮影する機能なども持たせるとしている。

「AZ-500」スペック