会場で注目を集めていたのは、クリアパルスとWINGGATEが共同で展示を行っていたトライコプター機(3つのローターを持つ)の小型ドローン「AtlasPRO」だ。開発したのはラトビア共和国のAtlas Dynamics社で、すでにラトビア国軍、オランダ軍やノルウェーの捜索救助隊、2019年にブラジルで開催されたサッカーのコパ・アメリカ大会の警備などで活用されており、日本においても防災・警備分野での活躍が期待される。日本では、今回の展示会で初めて公開された。

特徴的なトライコプター機 後部のローターがロールすることで機体をコントロール

トライコプター機のAtlasPRO。機体は小型・軽量でサイズは550(L)×550(W)×120(H)mm(アームとプロペラを伸ばした状態)で、重量は1.5kg(バッテリー含む)。価格は基本セット(ドローン講習込み)で700〜800万円となる見込み。
バッテリーは機体前方から挿入する。機体下部には障害物検知用のLiDARセンサー。
地上局(GCS)「AtlasSTATION」。iPadとバッテリーが内蔵されており、Atlas専用のiOSアプリ「AtlasApp」で、フライトプランを簡単に作成できる。シンプルかつ直感的に使えるユーザーインターフェースとなっている。アプリは日本語化の予定。
専用のバックパック。
専用のハードケース。
通信モジュール「AtlasRELAY」。中継機として活用したり、ドローンと地上局の間に配置することで通信距離を拡大したり、ドローン映像を複数のデバイスに送信するなど、ドローンとその他のデバイスを簡単に接続できる。

 機体は小型・軽量で専用のバッグパックまたはハードケースに入れて持ち運びが可能だ。組み立ても簡単で、現場に到着して3分でフライト準備が完了するとのこと。IP53の防塵・防水設計、最大風速抵抗15.5m/s、動作温度 -20〜55度、飛行高度 最大6,000m、バッテリーは寒冷地に対応したものとなっており、タフな環境下での運用が可能だ。最大運用時間は32分。GCSによって複数の機体を同時に制御できるので、バッテリーが切れそうな機体を別の機体とフライト中に交替させてシームレスに運用させることや、ドローンの情報を複数のデバイスにリアルタイムで共有したりできるメッシュネットワーク機能を備えている(ただし、複数台の同時飛行については日本では許可されていない。現在、有人地帯における目視外飛行(レベル4)での複数台運用に向けて各社さまざまな運用試験を進めている)。

後部ローター部。軸が回転して機体をコントロールする。

 AtlasPROの一番の特徴は3つのローターで飛行するトライコプター機ということだ。後部のローターがロールすることで機体の向きや横移動をコントロールすることができる。実際、デモ動画を見ても安定的に飛行していたのが印象的で、担当者によると「飛行効率を最適化したらトライコプターになった。自動航行を基本に短期間の講習で誰でも飛ばすことができる」という。

オプションの4Kカメラ「KALOS 35」。解像度は4152×3062(30FPS)。
機体裏側に差し込み口があり、ジンバル部分を差し込むだけ。

 オプションとして赤外線カメラ(2種)、4Kカメラ、フルHDズームカメラの取り付けが可能で、用途に応じて選択ができる。取り付けは機体裏面の差し込み口にジンバル部分を差し込むだけと、とても簡単だ。
 また、ドローンポート「AtlasNEST」を利用すれば離着陸と充電(バッテリー4本の充電が可能)を自動で行える。遠隔地からボタン1つでドローンが離陸し、充電が必要になったら自動でドローンがポートに帰還する。「AtlasNEST」を使用すれば、24時間体制の警備やモニタリング等を全自動で運用できる。
 AtlasPROは、基本的に自動飛行モードで運用することを想定しており、災害時で人の出入りが難しい場面から、山岳地帯などの遭難救出、平時の警備・監視まで、操縦オペレータいらずで簡単に運用が可能だ。今後、レベル4の運用が開始したときに、真価を発揮する機能が満載のドローンといえるだろう。なお日本では、代理店がクリアパルス、運用をWINGGATEが担当し、機体一式のレンタルサービスも提供している。