「国が信頼性の基準を作ることでドローン産業が発展する」

 第三部では「日本のドローン産業の飛躍的発展のために」と題して、前半は国土交通省総合政策局、経済産業省製造産業局、農林水産省生産局の登壇者が、各省の取り組みやドローンに関する状況を説明した。

 国土交通省総合政策局の佐藤寿延氏は、同省の河川管理においてドローンを活用している事例を紹介。関東地方整備局では2019年2月にドローン運用チーム「関東River-SKY-i(リバースカイアイ)」を創設し、河川、ダム、砂防ダムの管理を行っている。同チームではグリーンレーザー搭載ドローンを擁し、河川構造物を定期的に撮影することで、差分管理を行っていると説明。また、台風などの災害時には決壊した堤防などの状況を、いち早く上空から撮影するなど、日ごろからチームとして訓練を行うことで機動的に対応できる体制を整えていると紹介した。

国土交通省総合政策局公共事業企画調整課の佐藤寿延課長。

 また、農林水産省生産局の今野聡氏は、同省として2019年3月に策定した農業用ドローンの普及計画や、「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」の取り組みについて説明した。そのひとつとして今年8月に佐賀県で行った、225haに及ぶ圃場センシングの例を紹介。広大なエリアをセンシングするにあたって、マルチコプターではなく固定翼型ドローンを選択したが、飛行の許可・承認手続きに半年以上かかったという。「プロペラがとまった時にはどうする? 下に人がいるときにはホバリングできるのか? といった議論を航空局と重ねながら許可・承認を受け、片道6kmを3往復という飛行を実現した。この実績を全国各地に展開して、行政の効率化につなげたい」と今野氏は説明した。

農林水産省生産局技術普及課の今野聡課長。

 第三部の後半には登壇者によるディスカッションが行われた。この中で楽天の向井氏が「ドローン物流がビジネスとして成り立つには、都市部において高頻度で飛行する必要があるが、今の機体では信頼性が低く、実現できない。こうしたドローン利用の広がりが先か、信頼性の高いドローンが生まれるのが先かと、ニワトリとタマゴの議論になってしまう。そのためにまずは国が基準を作って示す必要があるのではないか」と質問。

経済産業省製造産業局産業機械課次世代空モビリティ政策室の川上悟史室長。

 これに対して経済産業省の川上氏は、「役所が反省しないといけないのは、実証事業は素晴らしいが、やりっぱなしになっているところがあることだ。実証をやりつつ市場につなげていくことが足りてない」と説明。さらに「モノづくりと並行してサービサーがビジネスモデルを作っていく必要がある。モノづくり企業が作った製品をサービスにはめ込んでいくなかで、それにより新たな産業ができてくる」と答えた。

 今回のフォーラムでは、ドローンの利活用を積極的に進める民間事業者と、ドローンの利用を法規制で所管しその一方で産業利用を奨励する官庁担当者のほか、オンライン配信というスタイルを利用して、視聴者からも多数の質問が寄せられ、幅広い意見が交わされた。その中では、実証実験などを通じて浮かび上がったニーズと、ドローン産業全体を俯瞰する行政の動きとの違いといった課題なども浮き彫りとなるなど、議論が深まったフォーラムとなった。