日本ドローンコンソーシアム(JDC)は、11月10日、11日の2日間、オンラインによる「JDCフォーラム2020」を開催した。JDCでは2019年11月にフォーラムを開催し、ドローン産業に関連した内閣官房、国土交通省、経済産業省、総務省の担当官を招いてパネルディスカッションを開催し、大きな反響があった。そこで、今年も会期初日には3時間の座談会を開催。その中で、JDC会員企業の代表者と国の各機関の代表が集い、日本のドローン産業を取り巻く課題と今後への対応について熱い議論を交わした。

2021年初にもレベル3による東京湾縦断飛行プロジェクトを実施

 フォーラムの冒頭には、JDC会長の野波健蔵氏が「コロナが世界のドローン産業に与えた影響」と題した基調講演を行った。プレゼンテーションは独Drone Industry Insightsの資料を引用し、「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世界的に経済活動が停滞する中、リモートや非接触というキーワードにおいて、ドローンが有効に活用されている」という調査事例を紹介。

野波健蔵 日本ドローンコンソーシアム会長。

 コロナ禍の中で世界的に非対面式のビジネスになり、生産量が減少するなど、経済が縮小傾向にある中で、ドローンがビジネスに与えた影響として、調査企業の54%がポジティブに捉えているという。また、特に海外の物流分野ではコロナ禍以前からドローンの利用が進んでおり、アメリカではドローン配送業という分野で免許を取得し、医薬品や食料品といった小売商品の配送が始まっていると説明。野波氏はこうした物流分野への取り組みが日本では遅れており、今後の進展に期待したいと話した。

2025年頃からは物流用や乗客用ドローンの伸びが大きくなると野波氏は説明。

 また、物流分野についてはJDCでも東京湾縦断飛行プロジェクトを進めていることを野波氏は説明した。現在、横浜市と千葉市の往復には、首都高速道路等の湾岸の道路もしくは東京湾アクアラインを利用することになっているが、本プロジェクトは横浜市と千葉市を結ぶ東京湾上空にドローンを往復させて、これらの地上交通網とは別の“第三の大動脈・空の交通システム”を構築するというもの。また、大規模災害等の際に、被災地の調査や緊急物資の輸送等も視野に入れているという。

JDCでは神奈川県横浜市から千葉県千葉市の間で、東京湾を縦断するレベル3飛行プロジェクトを進めている。

 このプロジェクトには凧(カイト)と推進用プロペラを持つ航空機を組み合わせたカイトプレーンを使用。「速度は出ないが非常に安全性が高い」(野波氏)といい、「一日に数百隻の船舶が往来する東京湾の上空を飛行するだけに、機体をはじめとしたシステムに冗長性をもたせるなど、極めて高い安全性が求められる。そのためこれまでにも1年近く国土交通省と交渉を行ってきた」(野波氏)という。すでに熊本湾岸エリアでは9月から11月にかけてレベル2での飛行実験を行っており、11月から12月にかけて東京湾上空でレベル2による飛行実験を行ったうえで、2021年1月からレベル3による飛行を行うとしている。

プロジェクトではカイト(凧)型ドローンを利用。速度は出ないものの安全性は高いという。

 また、野波氏は2021年3月上旬にJDCより『日本ドローン年刊2021』を発刊することを披露。「これまで、日本のドローン産業を俯瞰できるデータベースがなかった。ドローンサービスやソリューションを提供する企業から、“日本にどのようなドローンがあるのか知りたい” “目的に合ったドローンがあるのかどうかを知りたい”といった問い合わせがあった」と野波氏。そこで、日本のドローン関連企業300社を機体と企業で分類して紹介するものを含め、合計700社のリストを掲載するという。同書はA5版の書籍として出版するほか、データベース化したものを2021年10月頃公開するとしている。