2022年3月18日、空の移動革命に向けた官民協議会・全体会合が開催された。今回の会合では、空の移動革命に向けたロードマップ・改訂版の取りまとめが行われた。ロードマップでは、2025年の大阪・関西万博に向けて、次世代航空モビリティ(空飛ぶクルマ)の社会実装を進める方針が示された。
空の移動革命に向けた官民協議会
空の移動革命に向けた官民協議会は2018年8月に設立された。経済産業省製造産業局と国土交通省航空局が事務局を務めている。次世代航空モビリティ分野の事業者や有識者、関連する政府機関が官民協議会に参加している。2018年12月には、「空の移動革命に向けたロードマップ」の取りまとめを行った。
官民協議会は、官民での議論を継続的に行うため、2020年8月に実務者会合の設置を行った。実務者会合のもとに、ユースケース検討会や、ワーキンググループが編成されている。ワーキンググループでは、専門家が知見を共有し、各論点の検討を進めている。
空の移動革命に向けたロードマップ
空の移動革命に向けたロードマップは、「日常生活における自由な空の移動という新たな価値提供と社会課題解決の実現」を目標として掲げている。ロードマップは、三つのパート、(1)利活用、(2)環境整備、(3)技術開発で構成されている。
利活用については、下記のフェーズで構成されている。
・ 2022年度〜2025年度:試験飛行から商用運航の開始
・ 2020年代後半:商用運航の拡大
・ 2030年代以降:サービスエリア、路線・便数の拡大
ユースケースとしては、下記の分野が想定されている。初期の段階では、限定的なエリアでサービスを開始し、将来的にネットワークを拡大していく流れになる。
・ 都市:二次交通、都市内・都市間交通、都市圏交通への拡大(ネットワーク化)
・ 地方:観光・二次交通、域内交通・離島交通、地方都市間交通への拡大
・ 救急:医師派遣、患者搬送
・ 荷物輸送:離島・山岳の荷物輸送、都市部での荷物輸送、輸送網の拡大
環境整備では、下記の分野が項目として設定されている。
・ 機体の安全性の基準整備
・ 技能証明の基準整備
・ 空域・運航
・ 事業者の制度整備
・ 離着陸場
・ 社会受容性
・ 試験環境
技術開発では、下記の分野が中心的なテーマとなる。
・ 安全性・社会性
・ 運航管理
・ 電動推進等
今後に向けた展望
現在、日本各地の自治体で、次世代航空モビリティの実装に向けた機運が高まっている。大阪市・大阪府のスーパーシティ構想では、空飛ぶクルマが重点プロジェクトの一つとして設定されている。東京都は、東京ベイeSGプロジェクとして、湾岸エリアを中心に実証環境を整備する方針を示している。三重県は、三重県版ロードマップに基づき、移動ルート設定や地上インフラ整備について実証実験を行っている。
今後、日本で次世代航空モビリティの実装を進めるためには、ユースケースの具体化や、技術開発、制度設計・ルール形成、産業エコシステムの形成、地上インフラの整備、社会受容性を高める活動が重要になる。日本は交通インフラが高度に発展しているが、大都市圏の湾岸エリアや、郊外、離島・山間部などは、インフラ整備に課題を抱えている。次世代航空モビリティを実装することができれば、新しい移動ルートを設定し、こうした課題の解決に貢献することができる。パーソナルな移動を実現し、ポストコロナ社会に向けた新しいライフスタイルを提案することも期待できる。
空の移動革命を推進するためには、新しい価値観や世界観を示し、具体的な戦略を推進していくことが次のフェーズでは重要になる。
▼空の移動革命に向けた官民協議会
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/air_mobility/index.html