トレンドの最先端を盛り込んだ4年ぶりの新プラットフォーム「FIFISH E-GO」とV6の後継機「FIFISH V-EVO」

 世界の水中ドローンのトレンドは3つあると王氏は話す。1つ目は “プラットフォーム(機体制御関係)”、2つ目はユーザーのニーズに応える “オプションパーツの多様さ”、そして3つ目は “AI” だと言う。

 QYSEAは、すでに機体制御に定評があり、オプションパーツも多様に取り揃えている。今後に向けて、測量業務向けの3Dマッピングツールや海底用ソナーの開発に取り組んでいるが、他社に先駆けて新たな領域を切り開いているのがAIの分野だ。AIを使って何ができるのかということだが、QYSEAはAIにおけるロードマップを策定しており、まずは「ARスケーラー」による対象物の測量、次に対象物との距離を一定に保ったまま機体をホバリング(定位置保持)させる「ビジョンロック」が実装済みとなっている。これらはファームウェアのアップデートによって、全機種に対応することができるという。

 そして、次に実装されたのが、水中の撮影映像を鮮明にするAI技術だ。水中の濁度によっては、水中ドローンが使えない環境もあったが、それを可能な限り無くすために色をクリアに補正する処理とノイズ除去AIをFIFISH E-GOとFIFISH V-EVOに搭載した。ARスケーラーやビジョンロックはソフトウェアで構成されるため、アップデートによる適応が可能であったが、AIによる画像鮮明化は搭載するカメラが新設計となっており、アップデートでの対応はできないという。QYSEAはAIに注力し、水中ドローンをより知能的かつ誰でも容易に操縦できるように開発を進めているという。

「QYSEAのコンセプトはトレンドの一歩先を目指し、その技術を導入していくことです。今回の画像鮮明化、ノイズ除去は他社に先駆けての導入となります」と話す。

AIビジョンロック機能(出典:CFD販売)

4K&60FPS撮影と独自AI補正による美しい撮影が可能な「FIFISH V-EVO」

V6の後継機となるFIFISH V-EVO。4K60fpsに対応したカメラとAI画像鮮明化、ノイズ除去AIでワンランク上の映像を撮影できる。(出典:CFD販売)

 V6の後継機として、5月に「FIFISH V-EVO」を発売した。秒間60フレーム(60fps)・4K対応のカメラを搭載し、さらにAI技術による色調補正とノイズ除去機能を持つことが大きな変更点となる。高性能カメラ+AIで水中の速い動きをコマ落ちなく、鮮やかな色彩、高解像度・高画質で捉えることが可能となった。

AI画像鮮明化。独自のAIアルゴリズムを駆使し、水中映像の青みがかった色合いを補正してくれる。(左が補正後)(出典:CFD販売プレスリリース)
ノイズ除去AI。浮遊物やプランクトン、濁りなどをAIで認識し、映像から取り除くことができる。(右が補正後)(出典:CFD販売プレスリリース)

 他の機体同様にビジョンロックはもちろん、その他に166°超広角レンズ、5000lmのLEDライトを搭載し、最大深度は100m、最長稼働時間は4時間(環境により変動)となっている。

FIFISH V-EVOアームセットは、ロボットアームが装備されたモデル。(出典:CFD販売)

 スタンダードモデルのFIFISH V-EVO標準パッケージと、70Nの握力を持つロボットアームが装備されたFIFISH V-EVOアームセットの2つのモデルを用意(ロボットアームはオプションとして別売りも可能)。低コスト(20万円台)でプロの映像関係法人ユーザーの利用に応える機体となっている。

4年ぶりの新プラットフォーム機「FIFISH E-GO」

4年ぶりの新プラットフォーム機体となったFIFISH E-GO。

 FIFISHのラインナップの中でのFIFISH E-GOの立ち位置は、V6 EXPERTとV6 PLUSの中間を補完する機体と言えるだろう。

 新たなプラットフォームということで、機体のフォルムが変更され「ハンマーヘッド」デザインや、サメの尾びれにインスピレーションを得た「バイオニック・フィン」の採用で、従来シリーズよりも水の抵抗を軽減し、機動性と安定性を確保した。スラスターも大きくなり、また独自に新開発した「リングウイングモーター」を搭載している。機体下部に2個搭載されるバッテリーは交換式となり、電源を切ることなくバッテリー交換が可能な「ホットスワップ対応デュアルバッテリーシステム」となった。

 カメラは176°の超広角4Kカメラを搭載しており、水中でも業界最大水準の最大146°の画角を実現した。さらに10000lmのLEDライトが搭載され、照射角度は160°と広範囲を明るく照らせるので、暗い海での色の欠落問題を解決し、リアルな色彩を再現してくれる。

 コネクタは機体上部と下部のデュアルインタフェースで、現場のニーズにあわせて2つのオプションパーツを同時に搭載することができる。コネクタ形状は変更され、クイックリリース構造により数秒でオプションパーツを取り付けることが可能だ。オプションパーツはプロユースで利用できる多様なものが用意されている(従来シリーズのオプションパーツはコネクタの形状が違うため利用はできない)。もちろん、ビジョンロック、AI画像鮮明化とノイズ除去AIも利用できる。その他、最大深度は100m、最長稼働時間は2.5時間(環境により変動)。

 V-EVO、E-GOの登場でラインナップがさらに強固となったFIFISHシリーズ。今後のシリーズ展開も楽しみだが、どのようなAI機能が今後発表されるか期待される。