doとアマナビが共同開発した空撮講習プログラム「アマナ空撮技術コース powered by airvision」が、11月6日開講した。これは、DJIが設立したドローンパイロット訓練機関UTCのプログラムの一環で、空撮技術および表現に特化した講座はUTC初となる。本記事では、1日目の基礎編の様子をレポートする。

「アマナ空撮技術コース powered by airvision」では空撮現場で役立つスキルを体系的に学べる。

「アマナ空撮技術コース」がスタート

 空撮講習プログラム「アマナ空撮技術コース powered by airvision」は、1日目の基礎編と2日目の上級編で構成される。アマナグループでドローン人材育成やドローン空撮事業を展開するアマナビが、現場経験を生かしプログラム開発を手がけた。初回は11月6日〜7日、次回は2020年1月22日〜23日に開講予定。ドローン空撮ビジネスの”本格始動”に、必要不可欠な知識が凝縮された濃密な内容だ。

 基礎編では、静止画と動画の基本、Mavic 2シリーズを例とした機体スペックの比較、カメラワークのパターン集をシミュレーターで実習、そして法律や保険まで、体系的に学べる。なんとか飛ばせるという域を、一気に超えられそうだ。この日参加した19名の眼差しは真剣そのものだった。

DJI JAPANとORSOが共同出資で設立したdo株式会社の角井洋介氏。

 オリエンテーション冒頭では、doの角井氏が挨拶。UTCとは、ドローン産業利用におけるパイロット育成を目的としてDJIが設立しグローバルに展開する教育機関で、日本ではdoがUTCの企画運営を行っていることを説明。先日発表されたMavic miniにも言及し、「空撮が手軽で身近になったからこそ、高いレベルの作品を制作できる空撮クリエイターとして活躍してほしい」と受講生の活躍に期待を滲ませた。

アマナグループでドローン人材育成やドローン空撮事業を展開するアマナビの児玉秀明氏。

 続いて、空撮講習プログラム「アマナ空撮技術コース powered by airvision」の主催であるアマナビの児玉氏は、DJIからの声がけがありプログラム開発に挑んだことを明かし、「2011年からドローンの空撮事業をやってきたノウハウや技術、表現をみなさんに共有させていただきたい」と挨拶した。

ドローン空撮の役割は、映像表現における「スパイス演出」

 講師は、airvision深田氏が担当。airvisionとは、アマナグループの空撮プロフェッショナルチームで、2011年から空撮を開始。映画「魔女の宅急便」の実写版や、NHK大河ドラマ「真田丸」のオープニング映像など、数多くのTVCM、PV、ミュージックビデオなどの撮影で活躍している。

 2016年からアマナグループに参画したという深田氏自身も、2012年にドローンに出会い始動した、ベテランパイロットだ。「たくさん怖い思いをした。けれど素晴らしい瞬間にたくさん出会った。」と、これまで手がけた様々な映像作品を紹介しながら、「映像表現におけるドローン空撮の役割は、スパイス演出」だと説明した。

講師を務めたアマナビ空撮運営部の深田康介氏。アマナドローンスクール講師、airvisionパイロットとして活動する。

 そんなスパイス演出の効果を最大化できる空撮パイロットとして、まず最低限抑えておくべき知識とテクニックを学べるのがこの基礎編だ。焦点距離と画角の関係や表現の違い、絞りとシャッタースピードの関係やISO感度と露出の調整、センサーサイズ、フレームレート、NDフィルターの活用例など、静止画と動画の基礎を体系的に習得できる。ドローン空撮初心者の筆者だが、Mavic 2 ProとMavic 2 Zoomのスペックの違いをするりと理解できるようになって驚いた。「撮影時の設定重要ポイントまとめ」まであり、空撮の現場ですぐに役立ちそうだ。

airvisionで実際に使っている機材を紹介しながら現場での運用に関する質問に回答する場面もあった。

「効果的なカメラワーク」の実習で現場力アップ

 座学の後は、シミュレーターを使ったカメラワーク実習が行われた。3〜4人のグループに別れ、グループごとに講師がつく。ここでもairvisionならではの現場経験に裏打ちされた工夫が見られた。空撮でよく使うという、「効果的なカメラワーク」のパターン集が、まず共有されたのだ。

 前進・後退、上昇・下降、回転という機体の動きと、カメラチルトの組み合わせ。この引き出しをいかに増やし、再現性をいかに高められるか。クリエイターとして成長する、第一関門はここだろう。空撮現場では、瞬時にカメラワークを定めて、その場その時の一期一会を切り取る撮影スキルが求められる。具体的にどんなカメラワークのパターンがあり、どのような演出に効果的かを学べることは、現場力アップに直結する。

シミュレーターを使った効果的なカメラワーク実習の様子。
実際にプロポで操作してドローン空撮のカメラワークの訓練を行った。

ドローンは落下リスクのある「特殊な撮影機材」

 講習の最後には、安全管理に関する説明があった。航空法や小型無人航空機飛行禁止法、DIPS(ドローン情報基盤システム)など、空撮経験者なら当然知っているべき内容のおさらいから、今年7月26日付で施行となったFISS(飛行情報共有機能)、保険・補償制度について解説があった。

 「空を飛ぶのは非常に特別なこと。ドローンは魅力的な映像を撮れるが、常に落下リスクを抱える特別な撮影機材であることを、意識しなければならない。」(深田氏)

 深田氏は、過去の事故を例に挙げて、包括申請でイベント上空の飛行が許可されなくなったことなど、「何かあった場合には法律も変わっていく」とも言及し、ドローン空撮ビジネスに携わる者としての安全運航管理および安全に対する意識の重要性を強調した。

 なお、翌日の上級編も続けて受講するかどうかは任意。2020年1月22日〜23日に開講となる次回に、上級編のみ受講することも可能だ。上級編では、Inspire2のカメラワークなど、さらなる空撮技術向上を図る。受講料は、基礎編:48,000円(税別)、上級編:68,000円(税別)。

 ドローンのコンシューマー利用が一段と進むいま、アマチュアとは一線を画するスキルが求められている。受講後は、アマナグループのアマナイメージズが運営するストックフォト販売サービスの静止画・動画クリエイターに登録できる(要審査)という受講生特典を生かして、仕事の幅を広げてみてはいかがだろうか。